2017/03/24
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
防災ずきんは命を守る防災グッズなのに・・
手作り製品の材料は、不用品の布であったり、子どもが使っていた毛布を再利用するというものや、新しいバスタオルというケースをお聞きしたことがあります。
いずれにせよ布製なので、残念ながらヘルメットと同様の耐衝撃性能はありません。耐用年数は不明になります。
また、これも残念な事実なのですが、防炎性能もありません。独立行政法人国民生活センター 2010年9月1日 報道資料「子ども用防災頭巾の安全性 」に詳しく書かれていますが、手作りではなく、市販の難燃性をうたっているものの中でも、(財)日本防炎協会の認定品以外のものは、燃焼実験で燃焼してしまったことが記載されています。洗濯すると、燃焼しやすくなったという報告も記載されています。


防災ずきんの中には市販品であっても耐衝撃性能と防炎性能がないものがあることについて、国民生活センターは以下のように記載しています。
(1)防災頭巾の性能を理解すること
アンケートの結果から、6 割近い保護者の方は、防災頭巾に対して「衝撃吸収性能」を望ん でいた。しかし、災害時の過度な衝撃には対応しきれない場合もあるため、防災頭巾の性能を理解し、備えていても、日頃から、学校や家庭で避難経路の安全確保などの避難行動を認識し、防災に対する意識を高めるとよい。
(2)防災頭巾を購入する際は、詰物が使用によって偏らない構造や劣化しにくい素材か、また、 (財)日本防炎協会の認定品を購入の目安にするとよい。また、手入れ方法などの表示をよ く確認すること
詰物が偏ったり、劣化しては防災頭巾の性能が発揮されないことから、詰物の偏らない縫製になっていることや、ウレタンのような劣化しやすい素材を使用していないかなどを確認し、購入の目安にするとよい。また、防炎や難燃加工を謳(うた)っていても、その性能が発揮され ず、接炎を止めても燃焼が続き、焼失してしまうものがあった。中には外観が銀色で、消費者がいかにも燃えにくいと印象を持ちそうなものであっても、燃焼、焼失が見られた。火災などに備えるためには、防炎性能が確保されている(財)日本防炎協会の認定品を購入の目安にするとよい。さらに、洗濯の可否や手入れ方法などの表示も確認するとよい。
「子ども用防災頭巾の安全性 」(出典:独立行政法人 国民生活センター 平成22年9月1日 報道発表資料http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100901_1.pdf)
耐衝撃性能や防炎性能だけではなく、近年、こども用品にはもう一つ動きがあります。2015年12月21日に、子ども用衣料(ひもの安全基準)の JIS が制定公示されました。
年少のこどもの場合、頭部や頸部にはひもが付いたデザインを製造、供給してはならないとなっています。
これについて、アウトドア製品は海外の規格の方が厳格だったこともあり、早い段階から、首回りなどの安全対策がとられていました。
1997年米国材料試験協会(ASTM)引きヒモに関する安全規格制定
2歳~12歳のアウターウエアに、フード及びネック部分に引きヒモをつけない
EU
2004年欧州標準化委員会(CEN)コードヒモと引きヒモについて規格制定
7歳未満 フードや襟首にヒモを付けるのを禁止
7歳~14歳 ヒモを付けてもいいが、長さ等の安全規格あり
経済産業省の啓発動画にもあるように、首まわりのヒモやフード自体が子どもにとって危険になりうるということがわかります。
経済産業省 「子ども服を選ぶ新基準!」(出典:Youtube)
フードについてはJISの対象外とされましたが、力が加わった時はすぐに外れることが望ましいとされたり、保育園などによってはフードつきの服を禁止とするところもあります。首回りは危険が伴うという認識に変わってきています。
防災ずきんを手作りする場合であっても、災害時は日常時よりも障害物が多い事が考えられます。JIS規格を満たしていないと子どもの避難時にかえって危険な道具になってしまうかもしれません。
こんな事実を知ると、PL保険にも加入していない防災ずきんをプレゼントすることは、贈った人が後日責任を負わされることにならないか、心配にもなってしまいます。そのため、「手作り品は、耐衝撃性能と防炎性能そして、JIS規格を満たさないと思われますが」・・とお話するようにはしているのです。
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