2020/03/18
中小企業の防災 これだけはやっておこう
2. 就業時間外の安否確認
発災後すぐに安否確認システムを稼働させる
就業時間外に地震が発生した場合は、速やかに安否確認システムを稼働させます。
従業員の安否を確認するために、外部事業者が提供するサービスを活用する企業が増えています。もちろんメールや電話を使って確認する方法もありますが、混乱している被災時に従業員の手作業で確認することは非常に困難なため、何らかのシステムを導入し、自動的に集計することを検討するとよいでしょう。
安否確認システムは、職員が短時間で簡単に入力できることが重要ですが、被災後、時間の経過ごとに参集可能な従業員数が明らかとなるように入力項目を設定しておく必要があります。
なぜならば、従業員本人が無事であっても家族が負傷するなどの事情で出社するまでに時間がかかる、あるいは参集できないということが考えられるからです。
このように、安否確認システムには、安否を確認するとともに、被災後に参集できる要員を確認するという意味もあります。災害発生時に、企業内で確保できる従業員数、そして被災地以外の拠点から参集可能な従業員数を確認することで、それらの要員を重要な業務に振り分けて事業を継続できるからです。
①職員の状況
・無事
・軽傷
・重傷
・その他
②参集可能な時間(選択肢は企業ごとに決める)
・勤務中(企業内で被災した場合など)
・1日以内
・2日以内
・3日以内
・3日超(当面出社不可を含む)
また、安否確認システムは導入するだけでは十分とは言えません。訓練を行うことで、実際に被害が発生した際でも、安否確認システム自体が稼働するかどうか確認し、もし不備があればプログラムの修正を行うなどの対応が可能となります。
あわせて、従業員が被災時にも速やかに入力・登録ができるように、研修などの機会を設けて啓発しておくことが大切です。
3. 参集ルール
安否確認システムが機能しないことも想定しておく
被災後に事業を復旧させ、その後の事業継続につなげるためには、従業員の確保が必須です。そのためには、夜間や休日などほとんどの従業員が会社にいないときに地震が起こった場合でも、必要に応じて、従業員が事務所や工場に集まる仕組みづくりが大切です。
しかし、実際に甚大な被害をもたらす地震が発生した際、被害の大きさや通信インフラの状況によっては、安否確認システムが的確に機能するとは限りません。また、安否確認システム自体は稼働していても、従業員が大きな被害を受けたためにシステムへの入力ができないことも考えられます。
そのような場合に備えて、次のような考え方で、従業員の参集ルールを決めておくとよいでしょう。
●参集ルールの考え方
震度5強以上の地震、あるいは大規模な自然災害で同等以上の被害が発生した場合は、従業員自身と家族の安全確保を前提とし、さらに交通の復旧状況も確認しつつ、自主的に参集するという方針です。どのような状況においても、自らを危険にさらしてまで参集するということにはなりません。
【ここがポイント】
企業の経営資源の中で、従業員が最も重要であると言っても過言ではありません。その従業員の安否確認を的確に行うことが、速やかな復旧と事業継続につながります。
1. 就業時間内と就業時間外で安否確認の手順が異なる
2. 安否確認システムを的確に運用するためには準備が必要
3. いざというときに備えて、参集ルールを決める
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方