2017/05/26
ランサムウェアと最新セキュリティ情報
経済産業省は2015年に情報処理推進機構(IPA)とともに「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」を策定しました。IoTやビッグデータの活用などに伴い、工場などの制御システムがネットワークとつながるなど、企業が管理するさまざまなシステムをネットワークに接続して連携することが一般的になってきました。そのため、情報システムだけでなく、このようなシステムを狙ったサイバー攻撃も、もはや避けられない状況です。しかし、企業自身がその重要性に気づいていないケースも多々見られます。
IPAの調査によるとサイバー攻撃を受けた企業の割合は37.1%。そのうち27.9%は攻撃を受けたが被害はなかったと答えていますが、9.2%は実際に被害を受けています。一方で米セキュリティ企業ファイア・アイの調査では7割の組織が外部から指摘されて、はじめてインシデントに気づいたとのデータもあり、サイバー攻撃を受けても自分たちで気づくのは難しいことを示しています。
経営者のサイバーセキュリティ意識を調査すると、セキュリティ対策を推進する経営幹部がいる企業は日本で27%、グローバルなら59%です。また、サイバー攻撃の予防を取締役会で議論すべきと答えたのは「どちらかといえば」を含めても68%であり、まだまだリスク認識が足りないと言えます。
ガイドラインで提示した経営者が認識すべき原則は1.経営者は、サイバーセキュリティリスクを認識し、リーダーシップによって対策を進めることが必要2.自社のみならず、ビジネスパートナーを含めた対策が必要3.平時および緊急時のいずれにおいても、対応に係る情報の開示など、関係者との適切なコミュニケーションが必要の3つです。
1.は企業がITを利活用するうえで、サイバー攻撃は避けられないリスクとなっており、経営戦略としてセキュリティ投資は必要不可欠であり、経営者の責務だという認識を持つこと。
2.は子会社や系列会社、取引先がサイバー攻撃を受け、自社の重要な情報が流出することも考えられます。サプライチェーンのビジネスパートナーも含めたセキュリティ対策を考える。
3.はサイバーセキュリティリスクや対策、対応に関連する情報の開示などを含めた関係者との適切なコミュニケーションは、ステークホルダーの信頼の醸成にもつながります。インシデントが発生した場合だけでなく日ごろから適切な開示を行うことが必要となります。
ランサムウェアと最新セキュリティ情報の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方