関場氏は拡張子表示やバックアップといった対策の重要性を語った

パソコン内のファイルを暗号化し、解除のために身代金を要求するウイルス、「ランサムウェア」による攻撃が世界的に猛威をふるっている。英国の病院が利用する国民保健サービスやフランス自動車メーカーのルノー、スペインの大手通信会社テレフォニカといった世界的企業や組織もダメージを受けている。ウイルス対策ソフト大手カスペルスキーのコーポレートビジネス本部エンジニアリング統括部統括部長の関場哲也氏に背景と対策を聞いた。

Q.ランサムウェアの被害が爆発的に広がったのはなぜでしょう。
3月に見つかったWindowsの脆弱性が今回の攻撃では利用されました。その対策が進んでいません。パッチをあてるといった対策を呼びかけても、ユーザーがそれに応えるといった脆弱性に関する管理ができていないうえ、新種のウイルス発見できるアンチウイルスソフトの普及も進んでいないのが現状です。

Q.被害にあっているWindowsマシンの特徴は何でしょう。
今回XPの被害は少なく、7に多いことから、必ずしも古いものだけが狙われたわけではありません。攻撃者は効率のいいところを狙います。7は幅広く使われ、「SMB(Server Message Block)」の脆弱性があったのが大きいとみています。

Q.世界的大企業の被害も大きいですね。
今回のランサムウェアは感染力が強く、1台感染して同じ環境下のほかの端末にも瞬く間に広がりました。えてして大企業ほどパッチの整備や古い端末の入れ替えといった対策が進まないものです。

Q.攻撃元と思われるのは。
コードなどからLazarus Group(ラザルス・グループ)であろうとみています。かつてソニーピクチャーズやバングラデシュの銀行などを攻撃しており、非常に高度な技術を持っている組織です。

Q.今回のランサムウェアの特徴は。
「WannaCry」(ワナクライ)と呼ばれています。通常、メールによる標的型攻撃で使われることが多いですが、今回はログオン機能で使われるSMBやファイル共有といったネットワークの脆弱性を突いたのが特徴の「ばらまき型」と言われています。すべてのパソコンにある機能が感染を広げており、ばらまき型の有効性が確認できたということは、今後もこの種の攻撃が続いていくでしょう。445/TCPポートも狙われています。会社の中などではファイヤーウォールで守られていますが、テザリングやWi-Fiルーターを使うと狙われる。社内外で設定を切り替える必要があります。

Windows 10の場合、エクスプローラーから表示を選択し「ファイル名拡張子」(赤丸内)をチェックすれば、拡張子が表示される

Q.防止はどうすればいいでしょうか。
OSなどソフトを最新のものに更新するほかに、Windowsで拡張子を表示することです。アイコンの絵だけで判断すると危険な「.exe」も開いてしまうことがあります。組織でしっかり教育した方がいいでしょう。アンチウイルス製品はブラウザ利用時にリアルタイムでウェブページのスクリプトをチェックする機能が必須。あとは動きだけでウイルスかどうか判断して止める「ふるまい検知」もないといけません。セキュリティソフト会社に情報を送ることで製品の質が向上します。オフラインでのバックアップも重要です。NAS(ネットワーク接続ハードディスク)などオンラインでは攻撃で狙われます。

Q.ランサムウェアに感染してしまったら。
今回の種類であれば身代金支払い期限の1週間以内に1度も再起動していなければ復号キーが手に入る方法も公開されているので、あわてないで専門家に相談すること。身代金を払ってもデータが戻る可能性は低く、犯罪を繰り返させる温床になります。絶対に払ってはいけません。攻撃者の研究力はすごく、これからも脅威がなくなることはないでしょう。基本対策を徹底することが安全につながります。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介