総合的なゾーニング・マネジメントを実施するために

前々回の連載で、筆者の親友である日本医師会総合政策研究機構客員研究員兼所長アドバイザーの秋冨慎司先生の提案している「Covid-19対策で緊急支援すべき22項目(Emergency Support Function:ESF22」を紹介したが、ここで述べている中の下記に掲げる6つの緊急支援について着目してみよう。

ESF 4  救急搬送支援(Ambulance)
ESF 6  感染者支援(Mass Care, Housing, and Human Services)
ESF 7  資源管理支援(Resources Support)
ESF 8  公衆衛生・医療支援(Public Health and Medical Services)
ESF21  隔離支援(Isolation)
ESF22  ご遺族・ご遺体対応支援(Mortuary Support)

ここからは、それぞれのESFについて秋冨先生からの解説だ。

ESF 4  救急搬送支援(Ambulance)
 概要:最初に急病者に接触する可能性の高い救急隊および警察官などへの二次感染(クロス・コンタミネーション)を防止するために、彼らに対しCBRNE対応の基礎教育や資機材支援を実施する。また、接触時の対応手順なども常にUpdateして彼らの安全を確保するための支援機能を司る。

ESF 6  感染者支援(Mass Care, Housing, and Human Services)
 概要:感染者や感染疑い者の自宅待機およびその家族の対応について、その方法や資機材支援。また食事なども含めて、2週間安全に隔離する環境を提供するとともに、家族へのいじめなど守るべきところを守れるような政策を打つための支援機能を司る。

ESF 7  資源管理支援(Resources Support)
 概要:限られた感染対策用資機材の統合された資源管理を行い、困っている病院や施設を適切に管理して支援をする枠組みを作る。また国内生産への支援も行う機能を司る。

ESF 8  公衆衛生・医療支援(Public Health and Medical Services)
 概要:これはすでに行われているかもしれないが、統合された指揮命令系統で、医療施設内外の養生、動線管理、ゾーニングの設定、定期的な清掃業務などの対応も常にUpdateしながら、国民も含めて正しい知識に触れられるような環境整備をする機能を司る。

ESF21  隔離支援(Isolation)
 概要:隔離施設設営とその運用を民間で運用できるように支援すべきである。COVID-19は急変するため、状態が少しでも悪化した場合の搬送システムの構築もしなければならない。ゾーニング・マネジメントの概念で言うと、総体的な動線管理を含めた医療施設以外のホテルなどでの一時隔離などを実施する機能を司る。

ESF22  ご遺族・ご遺体対応支援(Mortuary Support)
 概要:死に目に会えずにお別れすることも多く、ICUにいる間でも姿を見られたり話せたりするシステムを構築し、少しでも家族の身体的な負担を減らすことをする。また感染をしたご遺体の対応をマニュアル化し、ご遺族や葬儀関係者を守る方法を考えなければならない。また突然の死に対して、ご遺族への心の支援マニュアルを作成、心のケアチームに対応をさせるなどの機能を司る。

22のESFの中から6つだけをピックアップしてそれぞれの概要を紹介したが、この6機能を実践するためには関係するあらゆるステークホルダーの合意形成はもちろんのこと、“お金がかかる”ということである。その財源はどうするのか? 標準化されるべきプロトコールをどのように浸透させればよいのか? 問題は山積しているが、今こそオールジャパン体制でそれぞれの人間がそれぞれのリーダーシップを発揮して、今ここにある危機を乗り越えなければならないのではないだろうか。

次回は、危機対応時におけるリーダーシップについて解説する。