メイストーム―5月の気象災害―
この時期の特異な温帯低気圧
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
2020/05/07
気象予報の観点から見た防災のポイント
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
気象に起因する痛ましい海難事故は後を絶たないが、1954(昭和29)年当時はもっと悲惨だった。北海道根室の南東海上に出漁していた小型のサケ・マス漁船は、無線設備を持たないものが多かった。それが、猛烈な温帯低気圧に巻き込まれたのである。「ゴ・ヒト・マル」あるいは「ゴトウ」と呼ばれる1954年5月10日のメイストームでは、409隻もの漁船が一度に遭難し、361人が死亡または行方不明となってしまった。この大量海難事故は、温帯低気圧の怖さと、気象情報を入手することの重要さを物語る。
上の図は、1954年3月10日の未明3時の天気図である。中心気圧960ヘクトパスカルの、猛烈に発達した温帯低気圧(以下、単に「低気圧」とも書く)が、北海道のオホーツク海側にみられる。クモの巣のようにびっしりと描かれた等圧線が、東日本と北日本およびその近海を飲み込んでいる。等圧線は当時の描き方で、2ヘクトパスカルごとに描かれている。等圧線の間隔が狭いことから、気圧の傾きが著しく大きく、風が著しく強い様子が分かる。
「メイストーム」という言葉を聞いたことのある人は多いだろう。これは和製英語で、正式な気象用語ではないが、語呂が良くて、言いやすく、聞きやすいせいか、抵抗感なく使われるようだ。事典類には「4月から5月の暴風」とか「春の嵐」といった説明もみられるが、それは違うだろう。この言葉を使い始めたのは気象の専門家たちで、上記の1954年5月10日の低気圧のことをこのように呼んだのである。意味するところは、文字通り「5月の嵐」である。
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