ウェビナーの画面。当日はタイ政府のさまざまな支援も紹介された

独立行政法人国際協力機構(JICA)タイ事務所/JST SATREPSプロジェクト主催によるウェビナー「新型コロナウイルスによる製造業グローバルサプライチェーンへの影響と展望」が4月30日開催され、タイなどASEAN諸国を拠点とする企業活動への新型コロナウイルス蔓延の影響や今後の展望について、1時間半にわたる議論がオンラインで交わされた。

タイでは、2011年にチャオプラヤ川流域で発生した洪水でバンコク北部の工業団地が浸水被害にあい、日系企業を含むグローバルサプライチェーンが大きな打撃を受けた経緯がある。その洪水を上回る深刻な影響をもたらす新型コロナ蔓延への対策の一環として、JICAは今回、これまでの研究プロジェクトによる知見の共有や意見交換を目的とした「ウェビナー」の初開催を決めた。

当日は、タイを拠点とする日系製造業をはじめ、最大240名が各自のリモート環境から参加。講師はJETROバンコク事務所広域調査員の蒲田亮平氏と名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻教授の渡辺研司氏が務めた。

JETROの蒲田氏は、「新型コロナウイルスに対するタイの政策動向・経済支援策およびビジネスへの影響」と題し、新型コロナ感染拡大に伴うASEAN諸国政府の対応や輸出入を中心とした経済動向を解説。タイでは3月26日に非常事態令が発動、4月28日には非常事態令に基づく措置が5月31日まで延期され、現在は措置の緩和が4つのフェーズに分けて進められているほか、ビジネスを4分類に区分して緩和が進んでいることなど、当日時点での措置の内容を報告した。

一方、足元の経済では、主要産業である自動車製造業において、2019年第3四半期以来の輸出不振と国内販売低迷による厳しさが続くなか、今回の新型コロナの影響が直撃。今年に入り、工業生産指数や民間消費指数、購買意欲といった指標の悪化が顕著になっていることや、主要産業の一つである観光業への打撃も含めた見通しの不透明さから、GDP成長率見通しも他のASEAN諸国に比べて一層厳しいマイナス成長と見込まれていることを報告した。

蒲田亮平氏は、タイ政府の対応として、法人に対する税率・負担率の軽減や諸税の納付期限延長、金融支援、個人に対する社会保険制度を通じた失業・休業への補償などの支援施策を紹介。JETROとしては、日系企業支援のための相談窓口設置やウェブサイトでのアジア各国の新型コロナ関連情報提供などを展開していることを報告し、コロナショック緩和に向けて、これらの施策を含めた支援の活用を日系企業に呼びかけた。