巨大津波の備えから活性化戦略へ
新たな復興地域モデルを目指す静岡

地震、津波、原発事故と広域複合災害となった東日本大震災を教訓に、各地で地域防災計画の見直しが行われている。東海東南海地震の3連動地震の脅威にさらされている静岡県では、・行政民間企業地域住民など多様な主体が協力し、・・安全で安心な災害に強い県土づくりを強化している。県内で始まっている防災と地域成長が両立を目指す新たな地域づくりの取り組みについて取材した。


防災と地域成長の両立
静岡県が目指す防災による地域活性 静岡県

静岡県では、東日本大震災以降、沿岸部を中心に地震・津波への防災・減災対策の強化を図るとともに、津波の心配のない内陸部において、首都圏から関西地域までを結ぶ新東名高速道路を新機軸として、地域の特性を活用した先進地域づくりを推進している。「安全・安心で魅力ある“ふじのくに”」の実現を目的に、災害に対して備えるだけの受け身の姿勢ではなく、危機管理体制を強化することで、地域の活性化への貢献を目指している。

35年にわたる東海地震対策 

静岡県が位置する東海地域では、これまで幾度と巨大地震と津波に見舞われ、その都度大きな被害を経験してきた。 

東海地域から四国沖にかけては、100年から150年の周期で、ほぼ同じ場所で、同規模な巨大地震が繰り返し発生している。しかし、1944年に東南海地震が発生したのに対し、東海地域の伊豆半島周辺の駿河湾から遠州灘にかけては、1854年の安政の東海地震以降、大きな地震がなく、そのため地震活動の空白域と呼ばれ、巨大地震の発生が予想されてきた。 

1976年に発表された東海地震説は、静岡県を中心とした東海地域で大きな社会問題となり、県や市町村でも東海地震対策が大きな課題となった。以来、県ではM8程度の東海地震を想定し、安政東海地震と同様の最大10メートル程度の津波が襲来することや、駿河湾内では地震発生後数分で津波の第1波が襲来することを想定して対策を進めてきた。こうした背景から、他の地域と比較して住民の防災意識が高く、災害に対する知識や経験の共有による高い防災文化を築いてきた。「災害に強い地域づくり」は、静岡県におけるブランド力でもあった。

東日本大震災を教訓に見直す 
しかし、未曾有の大震災となった東日本大震災は、これまで県が築いてきた震災・津波対策への自信を揺るがすこととなった。 

県では、東日本大震災における津波被害の教訓を踏まえ、震災から約1カ月後の2011年4月に静岡県津波対策検討会議を設置し、県の津波対策について、ソフト・ハードの両面で総合的に点検を行った。さらに、従来から想定していた東海地震に加えて、南海トラフ巨大地震の影響を加味した県の新たな地震被害想定(第4次地震被害想定)を検討。2013年6月を目処に発表を予定している。また震災後からすぐに取り組みが可能な防災の強化については「短期対策」想定、後まで時間を要する対策を「中長期対策」として2つの区分にまとめた。