イースト・ハーレムの赤十字

ニューヨーク大都市圏を担当する米国赤十字の災害担当最高責任者として、私は携帯電話を近くに置いておいていた。その水曜日の朝、私は採用面接を行っていたので、邪魔をされないようにと決めていた。私の電話が鳴りブルブルと震えた時、採用候補の元NYPD巡査部長は私の頭の後ろの壁に掛けられたテレビをちらちらと見続けていた。ついに、彼女が感情を表さない声で私に言った。「あなたは、この仕事に向かっているべきとは思われませんか」私は振り返り、この危機に直面した。

どの危機にも、性格の特徴の連なりがあり、そのなかに軌道がある。赤十字にとって、イースト・ハーレムのガス爆発災害は、最初の瞬間から高強度の軌道を辿った。

私たちが現場に車を止めながらOEM任務チームの無線交信を聞いていた。OEMは、117番街57番地にある公立高校を含めいくつかの受付センターの候補場所を検討していると言っていたので、私たちはそこに駆けつけ、ナンシー・ディアス校長を見つけた。彼女の学校を接収して命からがらで救助された家族を収容したいとのわれわれの要望を伝えたところ、彼女は躊躇しなかった。彼女はスタッフ呼び、彼らは即行動を起こし、学校で最も広い部屋である2階の体育室を片付け始めた。

数分後に警備員が私に近寄りながら、「赤ちゃんを連れ、ベビーカーを持った若い女性が正面扉に来ていますよ。爆発したビルの隣のビルに住んでいると言っています」と言った。

それから、彼らが流れ込んできた。パーク・アベニュー1642番地のまわりの9棟の建物に住んでいる母親と子供と高齢者の人たちだ。被災した家族と友人達が被災者支援と精神的なサポートを受けるために集まることができるように、われわれは受付センターを立ち上げた。

部屋がいっぱいになったので、われわれはボランティアと支給品及び食料を要請した。話が広がったようで、さらに続々と多くの人が流れ込んできた。午後の半ばには、小さい体育室は200人以上で溢れた。

彼らは衣類だけを背負って命からがら逃げてきた人たちである。彼らが必要といないものはほとんどない。処方薬や車椅子も必要だ。行方不明の家族メンバーも見つけなければならない。頭の上に屋根も必要だ。彼らには、誰かすべて大丈夫だよと言ってあげる人が必要だ。昼食も必要だった。

数時間のうちに、40人以上の赤十字のボランティアとスタッフが集まった。緊張が高まり続け、その午後はぼんやりと過ぎてしまった。ここの階段を100回ぐらいは上り下りしたことを覚えている。

ある時点で外に歩いて出て電話を取ったら、フラッシュライトの洪水の中に入ってしまった。政治家が正面扉に向かってゆっくりとパレードする間、NYPDは、報道陣のカメラ集団を歩道のラインの後ろに下げていた。

イースト・ハーレム選出の連邦議会議員のチャールズ・ランゲルは、カメラに向かって「私がワシントンDCに行って以来このような恐ろしいことが私の地元で起こったことは決してなかった。これはわれわれのコミュニティの9.11だ」と言った。

ニューヨーク市議会議長メリッサ・マーク・ヴィヴェリットは、私を20分間引き留め、被災家族を助けるに可能な必要なことは何でもやってますねと念押しを続けた。

われわれは先回りして、その夜のことを考え始めていた。午後4時頃、救世軍のわれわれのパートナーと協働しながら、数ブロックはなれた東125番街にあるマンハッタン・シタデルに避難所を開設する手続きを始めた。OEMは被害者家族を移動させるためにMTAバスを配車した。被災した人たちを全て秩序よくバスに乗せる手順は、1941年のダンケルクの撤退に似た兵站作戦のようだった。午後11時30分に最後の人が座席に身を沈めてバスが出発した。赤十字と救世軍の新しいチームはシタデルで全ての人を受け入れるべく待機していた。

われわれ数人が後に残り、受付センターを閉鎖した。空っぽになった体育室の中に歩いて入ると、今までの混乱状態から静寂になった突然の変化に驚いた。誰かが冗談を飛ばした。(こんなジョークだった「俺をひき殺したトラックのナンバープレートを持ってる奴はいるか?」)

われわれは笑い始めた。安堵感が体を満たし、大笑いしながら板床の上に座り込んだ。私の経歴の中で最良の時であった。

われわれはシタデルのシェルターを2泊3日の間開設し、OEMと緊密に連携して、被災アパートの全ての家族を臨時の住居に収容した。イースト・ハーレムのガス爆発災害の対応で、300人近い赤十字スタッフは大人215人と子供113人を救助した。われわれは、100家族以上にケースワークと金銭援助を提供し、約6000食を手配し、1300件以上の心理的な支援の連絡も実施した。

イースト・ハーレムは、私に人々の人生の最悪の時に彼らを助けられるという特権を与えてくれた。そして1年後に、また起こったのである。

(続く)

翻訳:岡部紳一
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300