(出典:『Science is used for disaster risk reduction: UNISDR Science and Technical Advisory Group report 2015』)

本連載の 5 月 16 日掲載分の記事(注 1)では、アジア各国での災害リスク軽減における科学技術の活用状況に関する報告書を紹介したが、今回紹介する報告書『Science is used for disaster risk reduction: UNISDR Science and Technical Advisory Group report 2015』は、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の科学技術アドバイザリーグループ(STAG)が、災害リスク軽減に科学技術が活用されている事例を世界各国から集めた上で、提言をまとめたものである。

本報告書は 2015 年に仙台で開催された国連防災世界会議に向けて、災害リスク軽減に関する 2015 年以降の枠組み(注 2)の開発において、国家レベルや地域レベルなど様々な政策立案者や、災害リスク権限に関する実践者などの間での会話や協働を促進することを目的としてまとめられた。

本報告書でとりあげられている事例は次の通りである。これらの事例は各 1 ~ 2 ページ程度にまとめられているので、もしご興味を持たれた事例があれば、ぜひ本報告書をダウンロードしてお読みいただければと思う。

1) インド洋における津波による、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の防止:信頼できタイムリーな証跡の利用

2) メキシコシティーにおける地震警報システム:早期警戒システムの成功例

3) 東ティモールにおける、災害リスク軽減と気候変動への適応のための、科学的知見と地域における知識の統合

4) オーストラリアのタスマニアにおける、気候に対するレジリエンスの構築

5) モヘリ島(コモロ諸島)における、リスクアセスメントと土地利用計画との統合

6) 難民キャンプや開発途上国における、災害による下痢の防止

7) ダルフールにおける、保健サービスの利用可能性のギャップ予測

8) 災害リスク軽減:熱波による健康への悪影響を軽減するための計画

9) インドにおけるサイクロン「Phailin」による災害に備えるための、天気予報の活用

10) エクアドルの Tungurahua 火山におけるリスク軽減のための、コミュニティの統合と、観測所における監視

11) Ab Barak における地滑りの歴史をよりよく理解し、この地域における今後の地滑りを予測するための、多時期衛星画像の利用

12) オーストラリアにおける山火事リスクを減らすために統合された規制

13) カナダのケベックにおける、包括的な関わり方とコミュニティにおける災害レジリエンスの促進

14) 生存者の集団の総合的レジリエンスを認識し、理解すること

15) セベソ指令(注 2)と英国における大規模事故ハザード管理規制


これらの事例を紹介した上で、本報告書は、災害リスク軽減に向けて、行動のための知見を共有し、学際的アプローチでの研究を行い、様々なレベル(国レベル、地域レベルなど)でのパートナーシップを通じてレジリエンスを構築していくことを推奨している。

■ 報告書本文の入手先(PDF 46 ページ/約 1 MB)
http://www.unisdr.org/we/inform/publications/42848

注 1) 「海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み! - 災害リスク軽減に役立つ科学技術とは」 http://www.risktaisaku.com/articles/-/2835 (2017/05/16 掲載)

注 2) 後に「仙台防災枠組」として策定された。なお、本報告書の公開日については報告書内や関連 Web サイトに記載がないため、具体的な公開日は不明であるが、このような記述内容から、本報告書は国連防災世界会議の開催前にまとめられたもののようである。

注 3) セベソ指令とは「Council Directive 96/82/EC on the Control of Major-Accident Hazards」という EU 指令の通称で、危険物質を伴う大規模災害が発生した場合の人体や環境への悪影響を最小限にとどめるために制定されたもの。イタリアのセベソで 1976 年に発生した事故がきっかけとなって制定されたため、このように呼ばれている。

(了)