2017/06/26
安心、それが最大の敵だ
災害時の給水支援実績
自然災害時における水資源機構の給水支援の実績を見てみよう。
東日本大震災により、霞ヶ浦用水の送水管が破損し、利水者である桜川市の水道用水が断水した。そのため機構職員自ら浄水装置を運転し、給水活動を実施した。作られた水は市民へ飲料水として給水されるだけでなく病院などでも使用された。
●東京都小笠原村〔2011年7月16日~8月26日(41日間)〕
小雨傾向が続き、父島の水道水源ダムの貯水率が大幅に低下し、31年ぶりの大渇水に見舞われた。機構は小笠原村からの支援要請を受けて、浄水装置の貸与し、現地への職員派遣及び小笠原村職員への技術指導を行った。(小笠原村支援の第1回目である)。
●宮城県女川町江島〔2011年9月26日~2013年3月19日(541日間)〕
東日本大震災により、女川町の浄水場から女川町沖の有人離島である江島までの水道用水の供給が絶たれてしまった。機構は女川町からの支援要請を受けて、浄水装置の貸与や現地への職員派遣さらには女川町職員への技術指導を行った。高圧力浄水原水逆浸透膜(RO膜)を使用し、江島は飲料水が確保できるようになった。
●熊本県山都町〔2016年4月22日~同24日(3日間)〕
熊本地震の被災地支援として、相次ぐ地震で水道水が濁り、飲用に適さない状態が続いていた熊本県山都町に、(公社)日本水道協会と熊本県の要請を受けて可搬式浄水装置を派遣し同機構職員による給水支援を行った。(詳細は下記)。
●東京都利島村〔2016年6月8日~7月8日(31日間)〕
伊豆諸島の伊豆大島と新島の間に位置する利島で渇水が進行し、水道水源が枯渇する恐れが生じた。機構は利島村からの支援要請を受けて、浄水装置の貸与、現地への職員派遣及び利島村職員への技術指導を実施した。
熊本地震での実績
熊本地震での給水支援をやや詳しく見てみる。同地震では多くの尊い人命が失われ電気、ガス、水道などのライフラインに甚大な被害を生じた。政府発表によると、水道は一時最大で約44万戸が断水した。県内各地で、飲料水としての利用はもちろん、トイレ・風呂など日常生活に欠かせない用水がほとんど確保できない異常事態となり、市民生活に多大な影響を与えた。
水資源機構では、2016年4月18日に緊急災害対策支援本部を本社(さいたま市)に設置。日本水道協協会からの支援要請を受けて、同日可搬式浄水装置の配備拠点となっている利根導水総合事業所(埼玉県行田市)から、同装置を被災地へと出発させた。
支援の内容は、被災地に職員を派遣して可搬式浄水装置による給水支援を行うことであった。日本水道協会九州支部と熊本県環境生活部の要請から、熊本県上益城郡山都町が活動拠点に定められた。山都町では、相次ぐ余震により水道原水の地下水が濁り、飲み水としては適さない状態が続いていた。
水資源機構の派遣隊は、21日に給水支援地である山都町の上川井野の配水池に到着した。直ちに可搬式浄水装置の設置作業に着手し、翌22日には可搬式浄水装置が稼動を開始した。その後、山都町役場による水質検査が行われて飲用に支障がないことが確認された。浄化した水は、飲料水としてはもとより自衛隊が実施する入浴支援の風呂用水としても活用された。24日夕刻には山都町の水道原水が正常な状態に復旧したことから、同日で給水支援を無事終了した。給水支援活動の期間中、延べ90m3の飲料可能な水を届けたのである。
同機構では、2011年3月に発生した東日本大震災以降、全国各地での給水支援活動を通じて、装置の実用性を確認するともに、運用にあたっての課題と対策を整理することができたとしている。被災地での実践が自信につながったようである。今後は、新開発された装置も加わり、より確実な給水支援が可能となるものと期待されている。「今後とも、迅速かつ有効な水供給を行うべく、職員に対する訓練等を通じた操作技術の維持・向上を図り、社会的責任を果たしていくことができるよう努めていきたい」。同機構の担当者は力強くこう語った(水資源機構には多くの関連資料を提供いただいた。感謝したい。国土交通省水管理・国土保全局水資源部.の「日本の水資源」なども参考にした)。
(つづく)
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