2020/05/24
危機管理の神髄
同じ仕事、同じでない災害
われわれの緊急コミュニケーションセンター通信指令係は無線で FDNYの重大緊急コード10-60を聞き、われわれも直ちに向かった。FDNYの重大緊急事態では、既に混雑しているマンハッタンの通りに多量の装備と人員が投入される。私が到着した時FDNYは7番目の警告を発信して、指令所はFDNY、NYPD、コン・エディソン電力会社、主席監察医、建物局の人達で詰め込まれていた。この時点は、救出作戦が焦点だった。
赤十字のチームは仕事に着手し、1年前のイースト・ハーレムの事故と全く同じ業務を実施した。OEMと連絡を取り、われわれに現場から3ブロック離れた東三丁目通りの公立小学校PS63の校長と連絡を取らせた。われわれは、小学校の最も広い1階の体育室を片付けた。
われわれは、ボランティアと日用品と食事が必要であった。われわれは被災した家族と友人達が集団ケアと精神的なサポートに集まることができる受入センターを立上げた。われわれはこの話を広めた。イースト・ハーレムと同じように、イースト・ビレッジにも衣類だけを背中に背負って、ただ日々を生活している助けを求める人々がいることを知っていた。
数時間のうちに、その場しのぎのPS63小学校の受入センターには35人以上の赤十字ボランティアとスタッフが集まった。
電話を取るために一旦外に出たら、フラッシュライトの洪水を浴びてしまった。NYPDは報道カメラマンの集団を歩道の線より後ろに遠ざけていた。
しかし、最初の数分間で被災した家族はやって来ない。そして話が広まっても、まだやって来ないのだ。
赤十字にとっては、イースト・ビレッジ・ガス爆発災害の対応とイースト・ハーレム・ガス爆発災害の対応は瓜二つであった。
これらは、同じ軌道を持ち、被災家族数も同じ、都心人口密集地区も同じ、同じ役所が関与し、同じように小学校は満杯となり、同じ数のボランティアである。
イースト・ビレッジの人々の中には処方薬や車椅子が必要な人がおり、そして頭上に屋根や昼食も必要であることもわれわれは知っていた。 彼らには、全てうまくいくよと言ってあげる人が必要な人たちがいた。
イースト・ビレッジの人たちはそのようなことをやってもらうのに、赤十字を必要とはしないだけなのだ。
われわれはもうイースト・ハーレムにはいない
われわれのビジネスでは、カーペット敷きの会議室で、貧しく恵まれない人々がどのようにわれわれの重要な使命の一部であるかを話している。
イースト・ビレッジ界隈からイースト・ハーレム界隈まで、地下鉄6番線でわずか15分である。しかし、貧しくて恵まれない住民の割合はこれ以上に違っている。イースト・ビレッジでは、5人に1人未満が連邦貧困基準より下であるが、イースト・ハーレムでは1/3以上いる。つまりイースト・ハーレムは、ニューヨーク市の中で最も貧しい区域なのだ。 イースト・ハーレムでは肥満率が33%であるが、イースト・ビレッジの4倍以上である。
イースト・ハーレムの糖尿病の割合は13%であるが、イースト・ビレッジでは3%に過ぎない。ニューヨーク市内で、イースト・ハーレムの大人は、アルコール関連の入院率が3番目に高く、ドラッグに関わる入院率が2番目に高い。
イースト・ビレッジのガス爆発災害はわれわれに重要な教訓を教えてくれた。貧しく恵まれない人々は、われわれの使命の重要な一部なのではなく、貧しく恵まれない人々が使命なのだ。問題なのは、私はこの教訓をずいぶん昔に学ぶべきであったことである。ハリケーン・アイリーンでニューヨーク市が同じような教訓を学んだ時に。
(続く)
翻訳:岡部紳一
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
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