2017/07/18
講演録
テロに遭遇したら
外務省では全世界のニュースをモニタリングしています。24時間体制で大きなテロ事件や事故、または邦人被害の事件が発生したというようなニュースをモニタリングし、また、各国の大使館・総領事館が事実確認を行って,情報共有を行っているものです。
大きな事件があれば、初動の段階で外務省と官邸を含めた関係者との間で情報を共有しています。そして、1時間以内に在留届と「たびレジ」登録者のメールアドレスに事件発生の事実と注意喚起のメールを発信できるように努めています。このように、在留届、または「たびレジ」の登録をすると、いち早く情報入手できるのです。
主なテロとしては,爆発テロと襲撃テロの二つが挙げられます。爆破テロの場合は、1回目の爆発で人を集め、2回目には、より強力な爆発で多くの被害者を生じさせることもありますので注意が必要です。2回目の爆発は1回目の10~15分後に発生することが多いです。救援隊や警察、マスコミ等、より多くの人が現場に集まってきたタイミングを狙った犯行ですので、1回目の爆発があった場合には,いち早くそこの場所から立ち去ることが一番重要です。
襲撃テロの場合には、テロリストは自動小銃を持って中に入り込みます。現場に治安部隊が到着するのが平均15分間です。従って、襲撃があってから15分間、自分の命を守ることができるかどうか、これが生命のおそらくボーダーラインとなると思います。テロに遭遇するリスクを下げる方法としては、例えば、レストランでは、なるべく2階以上のレストランを使用します。2階まで上がって襲撃するのでは時間がかかりますので、1階部分で殺害が行われるケースが多い。ですから,2階以上にした方がよいというものです。
また、レストランの席のとり方です。一番奥の席に出入口に向かって座ります。なぜかといいますと、通常、テロの襲撃というのは、出入口から入り込みます。それをいち早く、0.1秒でも早く察知することができれば伏せることができるからです。反対に、出入口に背を向けて座っていますとテロリストが入ってきたことがわからないので避けるべきです。
その他にも、退避ルートを予め把握することが重要です。さらには、銃撃から身を守る、遮断するようなものや隠れる場所が近くにあるかどうか確かめることが重要です。
イスラム過激派の行動を見ていますと,欧米人がよく使うレストランを狙っていることが分かります。金曜礼拝の時間帯は注意が必要です。集団礼拝のある金曜日に外で遊んでいる方は異教徒であるとして,ターゲットになりやすいのです。また、独立記念日など多くの人が集まるような日も注意が必要です。
最後に、海外の安全情報の入手方法として「海外安全アプリ」を紹介いたします。2015年7月に導入されたもので,スマートフォンにインストールしますと,全世界の海外安全情報を見ることができます。更に,現地の緊急連絡先,在外公館の電場番号も掲載されており、非常に便利な機能となっておりますので是非とも利用なさってください。
(本記事は2月21日に当サイトが開催した海外リスクセミナーでの講演をもとに掲載したものであり、必ずしも外務省の公式見解でない場合もあります)
(了)
- keyword
- 外務省
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方