危機管理やBCPにおいては、対応を振り返る「検証」という作業が必要になります。PDCAサイクルは皆さんも何度も聞いたことがあるかと思いますが、P「計画」を、D「実行」して、それをC「評価」し、A「改善」する、この一連の作業の中のC「評価」が検証にあたります。

では、いつの時点で、どのように検証をすればいいでしょう?

訓練や演習を実施した場合は、必ず実施後に「振り返り」の作業を実施しているかと思います(もしやっていなければ、ぜひ取り入れてください)、災害や事故の場合、一通りの対応が終わった後、あるいは落ち着いた段階で検証の作業を行います。従って、英語では「After Action Review」と呼ばれています。

ところで、このAfter Action Reviewは、もともとと米陸軍によって開発された構造化された振り返りのプロセスのことで、「何が起こったか」「なぜ起こったのか」「どう対応したのか」「そもそもどうすべきだったのか」を分析することで、今後、より良い対応ができるように計画を改善することを目的としています。アメリカでは、緊急事態管理庁(FEMA)も災害などにおいてAfter Action Reviewを実施しおり、過去の大きなハリケーン対応などはAfter Action Reportが公開されています。日本でいう検証報告書のようなものですが、何をどう改善すべきかを具体的に示すことで教訓を忘れ去られることがないようにしているのです。

さて、AARは、事態対応が終わった段階、あるいは落ち着いた段階で行うと書きましたが、新型コロナウイルスパンデミックの終息までは、少なくともあと数カ月、あるいは数年かかるとも予想されています。このことを考えると、今の時点で、これまでに何が起こったかを評価し、戦略的に優先事項を特定し、学んだ教訓を次に生かすことが求められます。

実際、欧州疾病予防管理センター(ECDC)では、現在、テクニカルレポートを発行し、各医療機関に対し、In Action Review(途中検証)を行うことを求めています。そのやり方は、単に集まって話し合いをするというのではなく、WHOが示す検証の方法などにも準拠しつつ、準備をして、計画を立て、開催をし、その後のフォローアップをする4つのフェーズで行うことを推奨しており、それぞれのフェーズごとに注意すべき点を紹介しています。

実はリスク対策.comでは、今からちょうど10年前の2010年7月号で、AARの特集を組みました。当時、世界的な大流行をしたH1N1新型インフルエンザを振り返ることが目的で、10年後に再びパンデミックが起きても、その時の危機管理担当者が困らないようにしっかり検証をして、記録を残しておこうと、検証の具体的な方法や事例を紹介しました。タイトルはズバリ「10年後の危機管理担当者が困らないために」というものです。さて、当時の検証が今どれだけ生かされているでしょうか?

 

今思えば、もっと検証の必要性を強調すべきだったとも後悔しております。

そこで、リスク対策.comでは、今年、8月11日に新型コロナウイルス感染症対策セミナーを開催し、この中で、第37代東部方面総監・元陸将の磯部晃一氏(アジアパシフィックイニシアティブ財団上席研究員/ハーバード大学上席研究員)に、過去の事例などをもとに改善につながる検証の方法について講演していただくことにしました。実際の検証はどのように行われているのか、他では聞くことができない貴重な内容になることと確信しております。

まだ、参加枠はありますので、ご興味のある方はお申込みください。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/35929