2020/08/04
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
ヒューマンエラーが増加傾向
図1は2012年から2019年までの8年間における、インシデント発生状況の推移である。青色のバーはインシデントの年間発生件数を示す。赤色のバーはインシデントの規模を表す「ユーザー時間」(user hours)という指標で、インシデントによってネットワークが使用できなくなった時間に、そのネットワークの利用者数を掛けたもので、図では百万時間単位で示されている。

2019年に発生したインシデントで失われたユーザー時間は約9億8812万時間だそうである。この数字だけを見てもピンとこないが、これはEU圏内の人口5億人✕365日✕24時間に対して0.026%になるという。
なお、インシデント発生件数があまり変わっていないのに対して、ユーザー時間が2018年から劇的に小さくなっているが、この原因や背景に関しては本報告書では特に言及されていない。しかしながら2018年の時点では一過性の現象かもしれないと思われていたのに対して、2019年も同水準にとどまったことから、2018年が今後の長期的なトレンドの起点となっている可能性が指摘されている。
一方で図2および図3は、2012年から2019年までの8年間における、インシデントの根本原因(root cause)の割合の推移である。図2は件数ベース、図3はユーザー時間ベースのグラフである。
長期的に見ると、全体的にシステム障害(system failures)が高水準だがやや減少傾向にあり、一方でヒューマンエラー(human errors)がやや増加傾向であることが分かる。前述の要点(Key takeaways)の(4)に記載がある通り、工事業者や下請け業者の作業に起因するインシデントが多いようである。


なお「natural phenomena」というカテゴリーについては、「natural」という単語から自然災害のようなものを連想するが、内訳を見ると停電や火災、断線(人為的でないもの)など、一般的には自然災害とはみなされないものが含まれている。したがってここでは、通信事業者から見た外部環境で発生した現象と考えるべきであろう。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方