2020/08/10
危機管理の神髄
世界中で最も困難な仕事
科学者によれば、われわれの古代の祖先であるホモ・エレクトスは200万年前にはじめて地上で直立歩行をした。そのときまでには全てのホモ・エレクトスの心のなかに希望の煉瓦壁が構築されていた。つまり災害は誰もが記憶する限り、生活の一部であった。
人類はそのときから災害に対応してきたわけであるが、われわれの成績はよく言って、そこそこのものであった。しかし最悪の災害ということであれば、そこそこのものではない。長い歴史を通して、現在に至るまで大災害への対応はみじめな失敗の連続であった。
大災害のさなかにある大勢の人類同胞に対する支援を効果的になしえた世代はなかった。それには納得のゆく理由がいくつかある。大災害がもたらすのは特別な挑戦である。他の災害と異なるのは全ての人に同時に影響を及ぼすことだ。政治的な境界を越えて、ただちに入手可能な量をはるかに上回る資源の需要を作り出す。
それが、大災害への対応が人間の努力の中で最も困難なものである理由だ。災害専門家は、広大なパラレルな宇宙全体に散らばる多くの急を要する問題と満たされることのないニーズを発見し、解決することを求められる。それは、
・通常の論理のルールが当てはまらない
・ニーズが手元にある資源の100倍も大きい
・誰もがかかわることのできる能力の100倍もの問題がある
・緩慢になったり、突然飛ぶように過ぎたり、時間が伸び縮みする
・携帯電話が使えない
・道路がブロックされている
・そして、難しいという事実がやらないことの言い訳にはならない
世界だ。
難しい課題ではあるが、人類の同胞が最大の援助を必要としているとき、それをするのはわれわれの義務であり、威厳と尊敬をもってやらなければならない。
だから何を待っているのだ? 仕事にとりかかろう。
災害専門家は将来を予測し、ソフトウェアのバグや梃入れを要する目標を探すのにそんなに時間をかけるのはやめて、複雑な環境の下で未知のものに立ち向かう姿勢をいかに再構築するかを学ぶことにもっと時間をかけるべきである。
それをするのに方法は、2つはない。1つである。国中の災害専門家は、大きなチームのチーム、インシデントの組織、グレートマシーン(大災害が巨大であればあるほど巨大になる)に大同団結しなければならない。アメリカ合衆国は、グレートマシーンを組み立てる能力を必要としている。例えばグーグルやウォルマートのように大きくて、1日で上から下へ、下から上へ、組織内にくまなくコミュニケーションが図れるような組織である。
われわれの人的資産の全てがかかわらなければならない。ファーストレスポンダー、政府機関のスタッフ、ナショナルガード(州兵)の兵士、救助隊員、建設作業者、民間企業の従業員、全国の全ての市・町・郡・区からのボランティアである。チャレンジングなのは、どの政府機関、非営利組織、軍の大隊、民間企業も日常の業務で忙殺されていることだ。どの部分も分離されたサイロであり、日常の業務から引き離すことができるのはやむにやまれぬ必要性だけだ。
いま団結することによって、災害専門家はそのプロセスを体得することができる。全ての人が明瞭に理解することのできる分かりやすいプロセスであり、災害初期の数時間をもちこたえるために国の資源を持ち寄ること、組織の深くまで手を伸ばして必要なものは何でも購入し、請い求め、そして借りることだ。
OEMがニューヨークにしたことを誰かが国のためにしなければならない
それら全てのことは困難に思えるかもしれない、事実そうなのだ。しかし誰が脅威の本質とニーズの緊急性を否定することができるだろう。再度言うが、それをするのに2つの方法はない。ただ1つだ。
それはその種の包括的で、前向きで、挙国一致の計画づくりがなされるだろうということだ。問題はそれがいつで、前もってやることによって容易なものとなるか、次なるブラックスワンの後になって困難なものとなるかの違いだ。
われわれはそれをなすことができる。
アメリカ合衆国は、巨大なチームを編成して、現場に立って、戸別訪問をすることのできるグレートマシーンを建造することが可能だ。
われわれは指導者に連結してサイロの壁を取り壊すことができる。そうすることによって、市民を再び結び合わせ、秩序のある社会を取り戻すことができる。しかしそれをするためには新しい計画が必要だ。国の計画で、アポロ計画のように大きくて、野心的で、全てを包摂する計画だ。
—ジョン・F・ケネディ、1962年9月12日
それにはコミットメントが必要だ。あの1962年9月に見たケネディ大統領とこの国のコミットメントに匹敵するものが。この新しいアポロ計画によって、真の国家災害対応システムが、あらゆる種類の災害にとらわれた人類の同胞に、必要なときに、必要な場所で、必要な援助を届けることのできる21世紀のテクノロジーによるグレートマシーンができるだろう。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方