2020/08/20
昆正和の気候クライシスとBCP
■30年を経た今、何か変わったか
ジェームス・ハンセンの警告から30年余りが過ぎました。しかし、相変わらず活発な経済活動によって二酸化炭素は排出され続け、気温はどんどん上昇し、今日に至っています。

世界的には2000年に起こったITバブル不況や2008年のリーマン・ショック、国内では失われた20年からの回復の模索、度重なる震災からの復興などで、とにもかくにも経済の立て直しが最優先課題であり、その間に気候問題はどんどん隅の方に追いやられていった感があることは否定できません。

ハンセンをはじめ、気候変動を調査・研究した当時の科学者たちの予測は、今日から振り返るとすべて的中しています。温暖化の進行によって北極と南極、グリーンランドの氷床や万年雪が溶けて海面上昇を引き起こすこと、大気が高温になるために熱波や干ばつが起こりやすくなること、そして活発な水蒸気の上昇により激しいストームを発生させることなどです。

当時の科学者たちの入念な調査と正確なシミュレーションには驚くばかりですが、彼らにとって温暖化がどんな現象を引き起こすかは1+1=2と同じくらい明白なことだったのでしょう。
しかしそれでも、彼らの予想を超える出来事が2つありました。1つは、海洋が思ったよりも熱や二酸化炭素を吸収しやすい性質があることです。
海が二酸化炭素を吸収すると酸性化が進みます。南方の海ではこの海洋酸性化が原因と見られるサンゴの白化(死滅)が顕著になってきています(オーストラリアのグレートバリアリーフもその一つ)。サンゴは食物連鎖に複雑に関わっているため、サンゴがいなくなれば周辺の海洋生物も影響を受けるとされています。
もう1つは、温暖化が当時の科学者たちの予測よりも早いスピードで進行していること。この原因として、中国(世界最大のCO2排出国)など新興国の台頭が影響していることは言うまでもありません。
しかし、これらの国々が発展してCO2を多く排出することになった背景には、先進国からの多額の投資、低価格の原材料や商品の大量購入と大量消費がありますから、間接的には先進国が要因となっていることは確かでしょう。
昆正和の気候クライシスとBCPの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方