戦略的な協定目指す 


課題としては、企業からの提案に対しては協定に前向きに取り組んでいるものの、県として、協定の数をどの程度増やしていくのか、どの部分を強化していくかなど、協定の戦略が必ずしも明確になっていない点を挙げる。防災担当課だけでなく、協定にかかわる所管課も一緒になって、協定をマネジメントしていく必要性を説く。

渡邉氏は「実際に災害が起きれば、協定を結んでいたとしても事業者への要請は泥仕合のような総力戦になるだろう」と推測する。市町からの要請を聞き取りながら、事業者に対してはどれくらい支援を受けられるかを聞いて、積み上げ式に、支援の量を管理していくしかない。 

その時に、協定の締結方法などを見直したのでは遅い。県では、協定に関する意識の持ち方、締結方法、管理のあり方などについて見直しをしていきたいとしている。

物資の搬入場所を指定
法的対応も協定に盛り込む
2004年の新潟県中越地震、2007年の中越沖地震と幾度もの災害に見舞われてきた新潟県も、民間事業者との協定については、実行体制などを含め、細かく協議して締結するとこにしている。 

新潟県における民間事業者との協定数は現在83件。協定締結までの流れは、他県と大きくは変わらない。基本的には、事業者からの提案を受け、ジャンルに応じて担当部署を紹介する。「担当部署で必要性を検討した上で、県としてメリットがあれば協定を交わす」と県防災企画課副参事の明間聡氏は語る。ただし、実効性については細かな点まで評価する。事業者の規模や、県内での店舗展開状況、工場の場所、被災時における物資や資材などの搬入ルートなども確認する。過去の災害経験もあり、物流には特に気を使う。「ロジスティックなしに協定は語れない」(明間氏)というのが理由だ。 

物資の引き渡し方法も明確にしている。具体的には、原則として避難所に搬送することを要件とする(単に「指定する場所」としている協定もある)。ただし、民間事業者の運搬が困難な場合は、『甲(県)に連絡をし、その指示に従うものとする』と含みを持たせる。 

「災害発生時に、市の災害対策本部にドンと物資が送られてきても、仕分けをするマンパワーが必要になる。2004年の中越地震では、大量の物資が1カ所に集中し、仕分けに多くの手間を要した。こうした反省から、避難場所に搬送することを明記するとともに、実際の被災時には〇〇市の〇〇避難所に、おにぎり何個、飲料水何本というように必要な物資の種類、数量が分かる形で企業に要請をすることになる」(同)とする。