2014/01/25
誌面情報 vol41
戦略的な協定目指す
課題としては、企業からの提案に対しては協定に前向きに取り組んでいるものの、県として、協定の数をどの程度増やしていくのか、どの部分を強化していくかなど、協定の戦略が必ずしも明確になっていない点を挙げる。防災担当課だけでなく、協定にかかわる所管課も一緒になって、協定をマネジメントしていく必要性を説く。
渡邉氏は「実際に災害が起きれば、協定を結んでいたとしても事業者への要請は泥仕合のような総力戦になるだろう」と推測する。市町からの要請を聞き取りながら、事業者に対してはどれくらい支援を受けられるかを聞いて、積み上げ式に、支援の量を管理していくしかない。
その時に、協定の締結方法などを見直したのでは遅い。県では、協定に関する意識の持ち方、締結方法、管理のあり方などについて見直しをしていきたいとしている。
物資の搬入場所を指定
法的対応も協定に盛り込む
2004年の新潟県中越地震、2007年の中越沖地震と幾度もの災害に見舞われてきた新潟県も、民間事業者との協定については、実行体制などを含め、細かく協議して締結するとこにしている。
新潟県における民間事業者との協定数は現在83件。協定締結までの流れは、他県と大きくは変わらない。基本的には、事業者からの提案を受け、ジャンルに応じて担当部署を紹介する。「担当部署で必要性を検討した上で、県としてメリットがあれば協定を交わす」と県防災企画課副参事の明間聡氏は語る。ただし、実効性については細かな点まで評価する。事業者の規模や、県内での店舗展開状況、工場の場所、被災時における物資や資材などの搬入ルートなども確認する。過去の災害経験もあり、物流には特に気を使う。「ロジスティックなしに協定は語れない」(明間氏)というのが理由だ。
物資の引き渡し方法も明確にしている。具体的には、原則として避難所に搬送することを要件とする(単に「指定する場所」としている協定もある)。ただし、民間事業者の運搬が困難な場合は、『甲(県)に連絡をし、その指示に従うものとする』と含みを持たせる。
「災害発生時に、市の災害対策本部にドンと物資が送られてきても、仕分けをするマンパワーが必要になる。2004年の中越地震では、大量の物資が1カ所に集中し、仕分けに多くの手間を要した。こうした反省から、避難場所に搬送することを明記するとともに、実際の被災時には〇〇市の〇〇避難所に、おにぎり何個、飲料水何本というように必要な物資の種類、数量が分かる形で企業に要請をすることになる」(同)とする。
誌面情報 vol41の他の記事
- 特集1 災害協定を見直せ
- 平時から役立つBCPを構築
- 自治体の協定 実効性の確保を重視
- 特措法の施行でこう変わった! 最新 新型インフルエンザ対策
- FOCUS マンションライフ継続支援協会MALCA
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方