もう1点、新潟県における協定の特徴は、法律の対応が盛り込まれている点だ。 

協定書には基本的に『甲(県)乙(事業者)間に紛争が生じ、当該紛争を解決するために訴訟の必要が生じた場合は、新潟地方裁判所を第1審専属的合意管轄裁判所とする』と明記されている。 

理由について明間氏は「災害時とはいえ、協定に基づく物資の供給については、売買契約であることから、協定の締結にあたり、あらかじめ法的対応についても相手方に説明している」と話す。


年1回は内容を見直し 


協定の有効期間は1年間とする。ただし、有効期間の満了まで、自治県、体とも解約などの意思表示がない場合は同一条件で更新される。「協定の内容を検証できるのは、災害が起きて実際に協定が履行された時ぐらい。それでは協定が形骸化してしまうため、有効期間を設けることで、更新時に協定内容について双方に見直す機会を設けている」(同)。 

協定を円滑に実行させるため、県では年1回、協定先に対して連絡体制調査票を送っている。民間事業者の所在地、連絡先、担当部署、氏名、電話、ファックス、Eメール、さらに災害発生時における緊急連絡先までを記載してもらうとともに、県の窓口についても同事項を記入し、相手方に送っている。 

連絡体制調査票ではさらに、物資供給協定を締結している企業に関してのみではあるが、供給可能品目や供給可能数量も記載してもらう。「ある程度の目安を言ってもらわないと、災害時にどのくらい調達が見込めるのか検討がつかない」ためだ。 

ただし、協定の書面上は、具体的な数字までは記載していない。「協定上は、あくまでも可能な範囲でやってくださいということにしている。企業にとっても、自社工場が被災するかもしれないし、数量の確約は困難なはず。そこまでの負担を相手に求めることは難しい」(同)。


協定の運用 
実際の災害発生時には、協定がなくても事業者などに応援要請をすることはある。明間氏は「個人的に協定は安心感だと思う。災害が起きたときに備え、連絡体制などを含め、機能するものをあらかじめ用意しているという行政として事前準備の1つ」と例える。実効性の確保に向け、協定内容や見直しに力を入れているのはこのためだ。 

協定を無暗に増やせば、平時のみならず災害時における負担も増える可能性もある。どのような順番で事業者に要請をするのか、事業者の規模や力量、搬入に要する時間などを評価した上で、協定を管理していなければ、要請作業だけでも大変な労力を要することになる。明間氏は「協定締結の際に、実際に動ける事業者をある程度絞り込んであれば、何が必要だからどこに連絡する、ということが素早く把握でき、対応も迅速になることが期待される」とする。ただし、「既存の協定が十分だとは考えていない」とも付け加える。 

「災害時にこのくらいの量が必要になるだろうから、協定によりその量を確保できるようにしたとしても、実際にはさらに想定を上回る量が必要になることも考えられるし、事業者がその量を実際には確保できない可能性もあるので、協定の目標を明確に定めることは実際には難しい」(同)。 

一方、戦略的に協定を結ぶ必要もあるとする。例えば、要援護者向けの食料などだ。