2017/10/17
防災・危機管理ニュース

東京都は16日、「今後の帰宅困難者対策に関する検討会議」の第2回会合を開催。「帰宅困難者対策の取組の方向性について」の骨子案を提示した。首都直下地震が起こった場合、都内だけで約517万人出ると予測されている帰宅困難者対策の基本的な考え方として共助の意識を根づかせるほか、今後の課題としては一時滞在施設の管理者への免責、要配慮者の優先などが挙げられた。
骨子案では基本的な考え方と今後の課題に分類。基本的な考え方では共助である「助け合い」の意識を根づかせ、帰宅困難者への対応を一時滞在施設の確保を基本とする。そして帰宅困難者や事業者による「助け合い」を通じ、安全を図ること、高齢者や障害者、乳幼児、外国人など要配慮者への環境整備を挙げた。
今後の取組への課題としては、一時滞在施設の確保に向け、地元区市町村と帰宅困難者受け入れ協定を結んでいない施設への受け入れ呼びかけ、帰宅困難者の受け入れ時に帰宅困難者にけがなど被害があった場合の一時滞在施設の管理者への免責の仕組みづくり、要配慮者を優先した一時滞在施設へ受け入れなどが挙げられた。
出席した委員からは施設管理者免責について「けがをした人がどこにも賠償を請求できないのはよくない。国や地方自治体が責任を負う方法を検討すべき」「都も受け入れ協力を呼びかけている以上、都が責任を負うことを考えてもいいのでは」「一時滞在施設を同様の機能を持つ都立施設と同類とみなし、都が責任について条例で定めるべきでは」といった意見も出された。都は国に法改正での対処を求める方針。
また区市町村と協定を結んでいない施設については、結んでいなくても受け入れに前向きな施設のリスト化や、事業者向けの勉強会など啓発の重要性、要配慮者については一時滞在施設への入所できる人の優先順位を明確にすべきといった意見も出された。
都では東京都宗教連盟と都内約4000カ所の宗教施設での帰宅困難者受け入れを目指し協議を進める方針。この日都が提示した資料によると、延床面積2000m2以上の宗教施設で一時滞在施設の協定を結んでいるのは11%にあたる28施設であることがわかった。都内大学で協定を締結済みなのは19%にあたる30施設にとどまっている。
都では年内に次回会合を開催し、帰宅困難者対策の取組の方向性について報告案をまとめる予定。
■関連記事「東京の寺社で帰宅困難者受け入れへ」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/3756
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方