南海トラフ西側観測網整備についても報告があった

文部科学省を中心とした政府の地震調査研究推進本部は16日、調査観測計画部会の第80回会合を開催した。2016年の熊本地震をふまえた活断層調査の成果や高知県沖から日向灘にかけての南海トラフ西側での海底地震・津波観測システムの整備についての中間とりまとめ、津波予測について報告が行われた。

活断層調査は九州大学大学院理学研究院の清水洋教授が研究代表者として行ったもの。地震の原因とされている布田川断層帯と日奈久断層帯のうち布田川断層帯の高野―白旗区間にある甲佐町白旗山出と日奈久断層帯の宇城市南部田の陸地2カ所でトレンチ調査を、日奈久断層帯の海の部分である八代海津奈木沖でボーリング調査を行った。

調査ではこれまで考えられていたよりも高頻度で地震が起こっていたのではないかということと、平均活動間隔は2000~3000年程度ではないかということ、布田川断層帯と日奈久断層帯の南部田までは1つの断層ブロックとみてよいのではという仮説が出されたことを明らかにした。

南海トラフ西側の観測網については検討ワーキンググループで出された1.インライン・ノードハイブリッド方式2.インライン・ノード分離方式(全域一体型)3.インライン・ノード分離方式(領域分割型)の3つの案から将来選択することが報告された。

インライン型は地震計や津波計といった観測機器を直接光海底ケーブルにつなぐ方式。ノード型は光海底ケーブルをループ状に設置し、ノードと呼ばれる水中脱着コネクターを備えた中継装置に各種計器をつなぐ。ノード型は計器の組み合わせの自由度が高いのが特徴。インライン・ノード分離方式の全域一体型はインライン型を全域に、ノード型を必要な箇所に敷設する。領域分割型はインライン型を浅部と深部に、ノード型を中間部に敷設する。全域一致型はインライン型、領域分割型はノード型が中心。

津波予測については気象庁が津波報告の現状を、防災科学技術研究所が北海道から関東の太平洋沖に設置のS-net、紀伊半島や四国東部沖に設置のDONET1、2について報告した。今年度末に完成するS-netは地震動で最大30秒程度、津波は最大20分程度従来よりも早く検知。DONETは和歌山県や三重県、中部電力への津波情報提供にも役立っているほか、今後JR東海・西日本の新幹線停止に地震の検知情報を活用する予定。

東京大学地震研究所の前田拓人助教授は、地震動で初期波源を推定するのではなく、数値シミュレーションと観測網の記録を同化させ、現在時刻の津波波動場そのものを直接推定する「津波データ同化法」を紹介した。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介