2017/10/18
直言居士-ちょくげんこじ
今年の夏、とある防災関連の展示会に行くと、ひときわ大きく目立つ4.5メートルほどの街灯が目に入った。ネクサスクリエーション(愛知県豊田市)が製造・販売する「あんしんポール(災害対策用自立型街灯)」だ。天井には太陽光パネルを貼り、オリジナルのバッテリーで停電時でも3日間のLED照明の点灯が可能なほか、緊急地震速報の放送、非常用コンセント、Wifi、衛星電話、AED、防災備蓄など一時避難場所に必要なありとあらゆる機能を詰め込んだ。なぜこのような商品を開発したのか。同社代表取締役の酒井直樹氏に話を聞いた。
「東日本大震災の後、福島の被災地で被災者の声を聴いた。被災者が最も困ったのは、震災後に電気も携帯電話も通じず、真っ暗闇の中で何日も過ごしたことだという話だった。もしこの状況が愛知県に来たらただ事ではないと思い、太陽光パネルでビジネスをしていた友人と一緒に開発したのが、この『あんしんポール』だ」(同社代表取締役の酒井直樹氏)
酒井氏は、もともとはダクト工事の設計・施工を行う酒井設備株式会社の社長でもある。その施行技術力は、地元のトヨタ自動車の工場からも引き合いがあるほど定評がある。「あんしんポール」も「豊田ものづくりブランド」として平成27年度認定技術・製品にも選ばれた。「基本的に、製品は自分で設計し、ほとんどの部分を自社の工場で作っている。もちろん特殊な部品については外注もするが、鉄の加工などはすべて自社工場によるもの。そうでなければこれだけ大きいものを作れる会社は少ないのでは」と胸を張る。
被災地の声を反映した商品開発
開発は、太陽光パネルを扱ってビジネスを展開しようとしていた地元の経営塾で知り合った友人と行った。当初はポールにソーラーパネルとLED照明を取り付けただけのシンプルなものだったが、酒井氏の強い希望により被災地の声を色濃く反映することにした。
太陽光パネルは当初2枚だったものが4枚に増えた。緊急地震速報は携帯電話と同じタイミングで、スピーカーから87dBの大音量で流すことができるようにした。被災地で聞いた声を反映し、特殊開発したリン酸リチウムバッテリーで100Vのコンセントが5つ、USBポートを4個口搭載。停電時でも携帯電話を充電できる機能を充実させた。ほかにも災害時の発生から3日間の間に必要な機能を多数取り揃えているという。
① 太陽光パネル…太陽光パネルで蓄電し、LED照明や非常用コンセントなどの電源に使える。非常時の停電に備え、電力を蓄えることができる。
②LED照明…照度センサーにより自動点灯・消灯する。
③オリジナルフラッシュライト…緊急時にはLED照明とともに点滅する。
④防犯カメラ…HDDレコーダーに録画。長時間保存することができる。24時間監視で、犯罪を防ぐ。
⑤スピーカー…緊急地震速報のほか、遠隔操作による音声出力も可能。
⑥緊急非常ボタン…災害発生時や犯罪が起きたときなどの非常時に押すことで、フラッシュライトの点滅やスピーカーからの音声が出力されるほか、防災備蓄セットの扉を開けることもできる。
⑦非常用コンセント‥AC100V×5、USBポート×4を備え、携帯電話などを充電できる。
⑧Wifi
⑨防災備品‥LED誘導灯、担架、手回し充電ラジオ、備蓄トイレ、トイレ用テントなど、防災備蓄用品を保管しておくことができる。沿岸部ではライフジャケットを保管するなど、カスタマイズも可能だ。
⑩ オプションで、AED(自動体外式除細動器)や衛星携帯電話を備えておくこともできる。
防犯カメラや照明で普段使いも
会社を立ち上げて1年半だが、今年9月末に第1号機が愛知県尾張市にある部品メーカーの工場に設置され、レセプションパーティでは市長や議員が訪れるなど、地元で歓迎された。酒井氏は「最近、子どもの誘拐など不安な事件も発生しており、防犯カメラや照明は地域の防犯に大きく役立つ。さらに災害時にも活用できるので、企業の社会貢献のシンボルとしてもいいのでは」とする。
今後の狙いはコンビニエンスストアなどに設置していくこと。災害時の重要なライフラインと位置付けられるコンビニエンスストアは、首都圏でも「災害時帰宅支援ステーション」としての役割が期待されている。「あんしんポール」が設置されていれば、災害で停電になった夜でもコンビニが明るくなり、Wifiや非常用コンセントが使用できるようになるのは被災者にとって心強いだろう。
「熊本地震は夜に発生し、停電が発生したため被災した方々はとにかく明かりのある市役所などに避難したという。災害時には、暗闇の恐怖感と、携帯が使えなくなることによって家族と連絡が取れない不安感が募る。『あんしんポール』を設置することで、被災者に少しでも安心をもたらすことができれば」と、酒井氏は被災地における明かりと電源の重要性について、熱く語ってくれた。
(了)
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
おすすめ記事
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
-
-
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方