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新しいシステムの概要は図1の通り。まず災害現場から、防災担当者もしくは現場担当者が現場の状況を報告する。システムはインターネット経由で情報を収集するためIDとパスワードがあればスマートフォンからでも入力することができる。入力された情報は、直接中央のコントロールシステム(サーバー)に送られ、WebEOCという災害情報収集共有システムと共有される。従来の「市町村が災害状況を取りまとめ、さらに広域振興局に報告し…」という段階を全て短縮し、担当者が直接データベースに入力し、その情報が府、市町村はじめ関係各機関に全て共有されるのが大きな特長だ。 

災害の現場状況のほかにも、気象庁からの気象予警報、土砂災害警戒情報、地震情報、総務省消防庁からのJアラート(国民保護情報)、市町村からの避難勧告など必要なデータは上流下流問わずすべて中央のコントロールシステムを通じてWebEOCに集約される。避難勧告や災害情報などは、一般財団法人マルチメディア振興センターが運営する「公共情報コモンズ」(※)を通じて報道機関へも自動的に配信される。さらに登録制のメールシステムを通じて府民にも情報が配信される。

※公共情報コモンズ…2008年の総務省「地域の安心・安全情報基盤に関する研究会」による「安心・安全公共コモンズ」構築についての提言が具 体化したシステム。従来であれば市民への情報伝達者である新聞やテレビなどの報道機関は、災害時は個別に自治体やライフライン会社などに被害情報を取材し て報道にする。やり取りはFAXや電話を中心に行われるため、情報の漏れや数字の間違いなどが発生し、市民への均一で正確な情報提供ができない場面もあっ た。そのような事態を防ぐため、自治体やライフライン会社が情報をある程度均一のフォーマットで公共情報コモンズに入力し、それを自動的に報道機関などに 配信することで、報道の正確性を上げるとともに、取材する側、される側の作業簡略化を図る。4月25日現在で、18の都道府県が運用を開始し、16都道府 県が準備・試験中だ。2015年度中には全都道府県の参加を目標にしている。

避難勧告前から情報提供 
従来は、市町村長が避難勧告の発令を決定した段階で、それを住民に知らせる仕組みだったが、新しいシステムでは、市町村の避難勧告の発令前から、河川の水位情報や雨量情報など避難の判断材料になる情報を府民と共有できるため、府民一人ひとりが勧告の前から避難準備などに取り掛かることができる。府では平時から地域の防犯情報や気象情報を府民に配信しており、現在約5万通を配信しているという。また、携帯キャリアのエリアメール機能を使えば、観光客などの一時的な滞在者にも配信できる。

市町村だけでなく、自衛隊や警察、消防など府や市町村と連携して災害対応にあたる関係機関にもIDとパスワードを配布している。自衛隊に関しては、注意報や警報段階からどこで何が起こっているかという情報を共有できれば、災害派遣要請時の協議時間を短縮することが可能になる。 

現在、陸上自衛隊は福知山市にある第七普通科連隊が京都府との窓口を担当しているが、海上自衛隊や京都地方協力本部などとも情報を共有しているという。ただし、今のところ国とはシステム連携はできていない。都道府県ごとに情報共有の仕組みやシステムが異なっているため、システム的な連携は難しい課題があるという。