2014/05/25
誌面情報 vol43
-->
新しいシステムの概要は図1の通り。まず災害現場から、防災担当者もしくは現場担当者が現場の状況を報告する。システムはインターネット経由で情報を収集するためIDとパスワードがあればスマートフォンからでも入力することができる。入力された情報は、直接中央のコントロールシステム(サーバー)に送られ、WebEOCという災害情報収集共有システムと共有される。従来の「市町村が災害状況を取りまとめ、さらに広域振興局に報告し…」という段階を全て短縮し、担当者が直接データベースに入力し、その情報が府、市町村はじめ関係各機関に全て共有されるのが大きな特長だ。
災害の現場状況のほかにも、気象庁からの気象予警報、土砂災害警戒情報、地震情報、総務省消防庁からのJアラート(国民保護情報)、市町村からの避難勧告など必要なデータは上流下流問わずすべて中央のコントロールシステムを通じてWebEOCに集約される。避難勧告や災害情報などは、一般財団法人マルチメディア振興センターが運営する「公共情報コモンズ」(※)を通じて報道機関へも自動的に配信される。さらに登録制のメールシステムを通じて府民にも情報が配信される。
※公共情報コモンズ…2008年の総務省「地域の安心・安全情報基盤に関する研究会」による「安心・安全公共コモンズ」構築についての提言が具 体化したシステム。従来であれば市民への情報伝達者である新聞やテレビなどの報道機関は、災害時は個別に自治体やライフライン会社などに被害情報を取材し て報道にする。やり取りはFAXや電話を中心に行われるため、情報の漏れや数字の間違いなどが発生し、市民への均一で正確な情報提供ができない場面もあっ た。そのような事態を防ぐため、自治体やライフライン会社が情報をある程度均一のフォーマットで公共情報コモンズに入力し、それを自動的に報道機関などに 配信することで、報道の正確性を上げるとともに、取材する側、される側の作業簡略化を図る。4月25日現在で、18の都道府県が運用を開始し、16都道府 県が準備・試験中だ。2015年度中には全都道府県の参加を目標にしている。
避難勧告前から情報提供
従来は、市町村長が避難勧告の発令を決定した段階で、それを住民に知らせる仕組みだったが、新しいシステムでは、市町村の避難勧告の発令前から、河川の水位情報や雨量情報など避難の判断材料になる情報を府民と共有できるため、府民一人ひとりが勧告の前から避難準備などに取り掛かることができる。府では平時から地域の防犯情報や気象情報を府民に配信しており、現在約5万通を配信しているという。また、携帯キャリアのエリアメール機能を使えば、観光客などの一時的な滞在者にも配信できる。
市町村だけでなく、自衛隊や警察、消防など府や市町村と連携して災害対応にあたる関係機関にもIDとパスワードを配布している。自衛隊に関しては、注意報や警報段階からどこで何が起こっているかという情報を共有できれば、災害派遣要請時の協議時間を短縮することが可能になる。
現在、陸上自衛隊は福知山市にある第七普通科連隊が京都府との窓口を担当しているが、海上自衛隊や京都地方協力本部などとも情報を共有しているという。ただし、今のところ国とはシステム連携はできていない。都道府県ごとに情報共有の仕組みやシステムが異なっているため、システム的な連携は難しい課題があるという。
誌面情報 vol43の他の記事
- 特集1 災害時に共有すべき情報を知っていますか? 機能する情報共有の仕組み
- 自治体1 京都府 全市町村が災害情報を共有
- 自治体2 静岡県 医療情報とも連携
- 自治体3 盛岡市 市民への広報重視
- 自治体4 瑞穂町 システムに頼らず情報共有
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方