2017/11/27
防災・危機管理ニュース

東京大学地震研究所、東北大学災害科学国際研究所、川崎市と富士通は24日、川崎市臨海部を対象とした津波被害軽減に向けた津波の予測や事前対策の技術検討に関して、それぞれの防災技術やAI・スパコンなどのICTを活用し、連携・協力して進めるプロジェクトについて定める覚書を締結したと発表した。川崎市臨海部を対象地域として、同市の危機管理室と連携・意見交換し、東北大学災害研と富士通研究所が開発した高速・高精度な津波浸水シミュレーション技術、東北大学災害研と富士通総研が進める、避難行動をモデル化した津波避難シミュレーション技術を活用し、東京大学地震研が想定する地震・津波ハザードについて検討する。今回の検討結果を将来的に南海トラフ沿岸域などの他地域にも展開し、防災に強い持続的なまちづくりへの貢献を目指す。

検討項目は「沿岸波形予測の高精度化」「リアルタイム浸水解析」「地域予測情報の活用方法検討」「沿岸津波挙動の特徴把握」の4つ。
「沿岸波形予測の高精度化」では、遠く離れた沖合の津波観測点において刻々と得られる観測データを用いて、川崎市臨海部の沿岸の波高や到達時間など津波波形を高精度に予測する手法を検討し、多様な想定地震に対して有効性を検証する。
「リアルタイム浸水解析」では、沖合観測データを基に、川崎市臨海部の津波浸水を高解像度でリアルタイム解析するシミュレーションモデルを構築する。
「地域予測情報の活用方法検討」では、「沿岸波形予測の高精度化」「リアルタイム浸水解析」の津波予測情報を利用することで得られる減災効果を、人の行動をモデル化したシミュレーションによって評価し、情報の有効な活用方法について事前検討する。
「沿岸津波挙動の特徴把握」では、複数の人工運河がある川崎市臨海部において複雑化する津波の挙動を、多様な想定地震に対するシミュレーションを通して事前把握する。
今後4者は、今回の技術検討を進め、予測の不確実性を考慮した利活用方法や他の津波予警報との整合性など実用化に向けた課題の検討を行う予定。将来的には南海トラフ沿岸域など他の地域にも適用することで、今後想定される地震と津波に対して強靭な地域防災・減災対策の実現を目指す。
■ニュースリリースはこちら
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/11/24.html
(了)
リスク対策.com:横田 和子
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方