第124回:企業のレジリエンスを評価するための枠組みの一例
Sanchis他 / Definition of a framework to support strategic decisions to improve Enterprise Resilience
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
田代 邦幸 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
第122回(2020年10月27日掲載)で、企業のレジリエンスの概念的なフレームワークが提案されている論文を紹介させていただいた(注1)。一方、その時の記事でも言及した通り、企業のレジリエンスに関する研究がまだ発展途上ということもあって、同様に企業のレジリエンスの概念やフレームワークについて論じられている論文は多数存在する。そこで本連載では、今後そのような論文を順次紹介していきたいと思う。
今回紹介させていただくのは、スペインのバレンシア工科大学にある「生産管理・生産技術研究センター(Production Management and Engineering Research Centre)」に所属する研究者2名による論文である(注2)。
この論文では、先行研究について系統的レビューが行われているわけではないが、過去に発表された論文の中から、企業に限らず一般論としてのレジリエンスの概念が示されている2本の論文と(注3)、企業のレジリエンスに関して論じられている6本の論文において、レジリエンスの定義や概念がどのように言及されているかが紹介されている。そして、これら6本の論文における企業のレジリエンスの定義を、次の3つの特性によって整理している(注4)。
a)脆弱(ぜいじゃく)性(vulnerability)
b)適応する能力(adaptative capacity)
c)復旧する能力(recovery ability)
前述の6本の論文の中で、これらの3つの特性全てについて言及されているのは2本のみであり、他はa)とb)について言及されている論文が2本、b)とc)について言及されている論文が1本、b)のみが言及されている論文が1本である。したがってこれらの特性が全ての論文において共通というわけではないが、これらの3つの特性から考えれば、現状でさまざまな考え方が混在している企業のレジリエンスの概念を全て包括的に説明できる可能性がある。
以上のような検討結果から、本論文では企業のレジリエンスを、脆弱性、適応する能力、復旧する能力の関数として次のように表現されている。