第125回:サプライチェーン・レジリエンスの概念的フレームワーク
Ponomarov 他 / Understanding the concept of supply chain resilience
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
田代 邦幸 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
今回紹介させていただく論文(注1)のタイトルは「サプライチェーン・レジリエンスの概念の理解」となっており、「The International Journal of Logistics Management」という、物流やサプライチェーンなどに関する話題を扱う学術雑誌に2009年に掲載されたものである。
本論文はこれまで本連載で紹介させていただいた多くの論文から参照されている。2020年7月14日に紹介させていただいたHan他の論文(注2)では、本論文が発表された2009年から、サプライチェーン・レジリエンスの能力、評価、測定に関する論文が増えていることが示されているので、そのような流れの中で多くの研究者が本論文の影響を受けているものと思われる。現に前述のHan他の論文で提案されている、サプライチェーンのレジリエンスを評価するためのフレームワークの最も基礎的な部分も、本論文の影響を受けていることが見て取れる。
本論文では、多くの分野をまたいで広範囲な文献レビューが行われ、そこで分かった結果を踏まえてサプライチェーン・レジリエンスの概念的なフレームワークが示され、さらに今後研究が進められるべき6つの研究命題が提示されている。
まず文献レビューについては、生態学、社会学、心理学、経済学といった分野でレジリエンスがどのようにとらえられ、定義されているかが概観されている。さらに組織のレジリエンス、緊急事態対応やサステイナビリティなど学際的な研究における状況がレビューされている。このように広範囲にわたって行われた文献レビューの結果から、サプライチェーンのレジリエンスにも通じると思われる考え方や観点、要素などが抽出され、後述するサプライチェーン・レジリエンスの概念的フレームワークに採り入れられている。