司会の東京大学生産技術研究所准教授の加藤孝明氏と、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科准教授の阪本真由美氏

内閣府(防災)普及啓発・連携担当は11月26日、宮城県仙台市で開催された「ぼうさいこくたい2017」において「あの時地区防災計画があれば‥」と題したセッションを開催した。進行は東京大学生産技術研究所准教授の加藤孝明氏。

セッションで講演した兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科准教授の阪本真由美氏は、九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市杷木地区の対応を発表。「杷木地区は2012年にも豪雨で被災し、その後住民たちは『自分たちの身は自分立ちで守る』と、自分たちで独自のハザードマップを作成したり避難所運営を訓練したり、非常に意識が高かった。しかしそれでも、以前被災した家が再び被災するなど、被害は繰り返された。地域が主役だけで本当にいいのだろうか」と問題を提起した。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションには跡見学園女子大学教授の鍵屋一氏、東北大学災害科学国際研究所教授の佐藤健氏、仙台市片平地区で地域防災リーダーづくりに取り組む片平地区連合町内会会長の今野均氏、札幌市危機管理対策室防災推進担当課長の瀬川裕佳子氏らが加わった。コーディネーターは兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝氏。

加藤氏は地区防災計画の実践から普及へのポイントとして、「標準モデルだけでは不十分とし、各地域によるカスタマイズと、自律成長するメカニズムが必要」とした。そのための工夫として、①良い事例を示す。できれば「読者モデル」のようなもの②外してはならないポイントだけを提示する③自らを客観視し、自ら考える機会を提供する―の3点を挙げた。

佐藤氏は「町づくりに防災を取り入れることはできないか。一見遠回りのようだが、いちばん近道かもしれない。防災「も」やるコミュニティ計画が必要」と話した。鍵谷氏は「福祉と防災は似ている。人は不便であっても不幸でなければ立ち上がれる。災害にあっても、不幸にならない町づくりが必要」と訴えた。

今野氏は仙台市片平地区で開催された「防災・宝探しゲーム」を紹介。若者も巻き込み防災リーダーを作ることの重要性を強調した。瀬川氏は札幌市の地区防災計画策定に向けての取り組みを発表。札幌市が制作した市民向けの防災アプリ「そなえ」を紹介した。

■「札幌市防災アプリ」(愛称 そなえ)ができました(札幌市ホームページ)
http://www.city.sapporo.jp/kikikanri/apri.html

(了)

リスク対策.com 大越 聡