2017/12/04
防災・危機管理ニュース

内閣府(防災)普及啓発・連携担当は11月26日、宮城県仙台市で開催された「ぼうさいこくたい2017」において「あの時地区防災計画があれば‥」と題したセッションを開催した。進行は東京大学生産技術研究所准教授の加藤孝明氏。
セッションで講演した兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科准教授の阪本真由美氏は、九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市杷木地区の対応を発表。「杷木地区は2012年にも豪雨で被災し、その後住民たちは『自分たちの身は自分立ちで守る』と、自分たちで独自のハザードマップを作成したり避難所運営を訓練したり、非常に意識が高かった。しかしそれでも、以前被災した家が再び被災するなど、被害は繰り返された。地域が主役だけで本当にいいのだろうか」と問題を提起した。

パネルディスカッションには跡見学園女子大学教授の鍵屋一氏、東北大学災害科学国際研究所教授の佐藤健氏、仙台市片平地区で地域防災リーダーづくりに取り組む片平地区連合町内会会長の今野均氏、札幌市危機管理対策室防災推進担当課長の瀬川裕佳子氏らが加わった。コーディネーターは兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝氏。
加藤氏は地区防災計画の実践から普及へのポイントとして、「標準モデルだけでは不十分とし、各地域によるカスタマイズと、自律成長するメカニズムが必要」とした。そのための工夫として、①良い事例を示す。できれば「読者モデル」のようなもの②外してはならないポイントだけを提示する③自らを客観視し、自ら考える機会を提供する―の3点を挙げた。
佐藤氏は「町づくりに防災を取り入れることはできないか。一見遠回りのようだが、いちばん近道かもしれない。防災「も」やるコミュニティ計画が必要」と話した。鍵谷氏は「福祉と防災は似ている。人は不便であっても不幸でなければ立ち上がれる。災害にあっても、不幸にならない町づくりが必要」と訴えた。
今野氏は仙台市片平地区で開催された「防災・宝探しゲーム」を紹介。若者も巻き込み防災リーダーを作ることの重要性を強調した。瀬川氏は札幌市の地区防災計画策定に向けての取り組みを発表。札幌市が制作した市民向けの防災アプリ「そなえ」を紹介した。
■「札幌市防災アプリ」(愛称 そなえ)ができました(札幌市ホームページ)
http://www.city.sapporo.jp/kikikanri/apri.html
(了)
リスク対策.com 大越 聡
- keyword
- 地区防災計画
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
津波による壊滅的被害から10年
宮城県名取市で、津波により工場が壊滅的な被害に遭いながらも、被災1週間後から事業を再開させた廃油リサイクル業者のオイルプラントナトリを訪ねた。同社は、東日本大震災の直前2011年1月にBCPを策定した。津波被害は想定していなかったものの、工場にいた武田洋一社長と星野豊常務の適切な指示により全員が即座に避難し、一人も犠牲者を出さなかった。震災から約1週間後には自社の復旧作業に取り掛かり、あらかじめ決めていたBCPに基づき優先業務を復旧させた。現在のBCPへの取り組みを星野常務に聞いた。
2021/01/21
-
台湾をめぐる米中の紛争リスクが高まる
米国のシンクタンクCouncil on Foreign Relations(CFR)は、2021年に世界中で潜在的な紛争が起こる可能性を予測する最新の報告書を公表した。報告書は、台湾問題における米国と中国の深刻な危機を、世界の潜在的な紛争の最高レベルとして初めて特定した。
2021/01/20
-
これからの国土づくり 「構想力」と「創意工夫」で
政府の復興構想会議のメンバーとして東北の被災地を訪ね、地域の再生や強靭な国土づくりに多くの提言を行った東京大学名誉教授の御厨貴氏は当時、これからの日本の行方を「戦後が終わり、災後が始まる」と表現しました。あれから10年、社会はどう変わったのか。いつか再び起こる巨大地震をめぐり、政治・行政システムや技術環境、市民の生活や仕事はどう進歩したのか。これまでを振り返ってもらいながら、現在の課題、今後の展望を語ってもらいました。
2021/01/14