2017/12/14
防災・危機管理ニュース

消防庁は13日、「消防防災科学技術高度化推進検討会」の今年度第1回会合を開催した。消防庁における研究開発のマスタープランである「消防防災科学技術高度化戦略プラン」の次期計画策定へ、主に現在消防を取り巻く環境の変化への対応について話し合われた。今年度中に次期計画を決定する予定。
同プランは5年に1度改定される。現行計画は2012年10月に策定。2011年の東日本大震災直後だったことから、大規模災害に備えた日常からの準備、危険物施設の地震や津波対策、水素や再生可能エネルギーといった新エネルギーへの対応などが盛り込まれた。この間、災害時の応急対応支援システムや同時火災対応訓練シミュレータ―の開発、石油コンビナートやガスなど屋外貯蔵タンクの地震シミュレータ―開発といった成果を生んだ。
次期計画では環境変化への対応を行う。主な変化として(1)変化・多様化する災害(2)社会全体の変化(2)企業や人々の取り組みの向上―を重視。災害対応では特に大規模な風水害が増加し、がれきや流木の発生で従来の救助技術での対応が難しくなると予測。地震では被害や避難指示発令状況などの把握の迅速化、火山噴火や大規模火災ではではドローンやGPS活用を課題に挙げた。テロ・国民保護ではJアラート伝達の多重化、避難訓練や避難施設指定といったミサイル対応、CBRNE(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)を含めたテロ対策訓練などを課題とした。
社会資本の変化では情報弱者への情報伝達や高齢化による救急搬送件数増、倉庫など建物の大規模化や複雑化による消火や救助の難航を懸念。消防士の高齢化や定年での大量退職で、若年男性の使用を前提とした資機材の見直しや技術伝承も課題に挙げられた。女性の消防参加へ働き方の見直し、被災地での女性用トイレや寝室の準備も提言。2020年東京オリンピック・パラリンピックへテロや熱中症対策、多言語対応も必要とした。
座長を務める関澤愛・東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授は「新しい事象へ対応するために現行計画の見直しを行っていく」と述べた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方