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□事例:コロナを恐れる人と、ただの風邪と考える人

12月に入り、新型コロナウイルスの検査陽性者数の増加が止まりません。「全国の感染者数が過去最多」「都内の曜日別感染者数が過去最多」「全国の重症者数○○人増えて、過去最多を更新」などと連日ニュースが報じ、「病床が逼迫してこのままでは医療崩壊が起こる」との声明が医師会らより発せられました。

旅行代理店を営んでいるAさんは、12月28日から1月11日までのGOTOトラベルの全国一斉一時停止の決定に「会社の存続にかかわる問題になる」と危惧しています。GOTOトラベルの開始当初は、地方経済の活性化を目的とした政策であり、旅行業界の追い風にもなるものと期待していましたが、当初の東京都の除外、11月に入ると大阪市と札幌市が除外、12月になってからの東京都の再度の除外と名古屋、広島市の除外という度重なる事業内容の変更に振り回されてきました。各地の予約のキャンセル対応に合わせて発行済み地域共通クーポンの回収にスタッフの作業量が激増し、てんてこ舞いの状況になりながらも、年末年始のかき入れ時に期待をしながらなんとか頑張ってきましたが、今回の全国一斉停止には「これ以上モチベーションを保って仕事をし続けることは難しい」と言います。1月12日から本当に再開されるのかも現時点では不透明なことも、その気持ちに拍車をかけています。

しかしながらAさんは「何が何でもGOTOトラベルの早期再開を」と単純に思っているわけではありません。「コロナはただの風邪なのに」という同業者には「ただの風邪でこれほど重症者が多く出るという話は聞いたことが無い。日本ではインフルエンザより死者が出ていないというが、アメリカでは例年のインフルエンザの5~10倍以上の死者数になっているのをどう説明するのか」と言い返したといいます。「全国民にマスクをさせて、出社制限をして、われわれの業界に壊滅的な打撃を与えた上でようやくその数値で収まっている病気と、マスクも付けず何の規制もないインフルエンザを同じ土俵で比較しても全く意味が無い」とも思っています。

それよりも、「このまま数が増えていったら医療崩壊が起きて社会が終わってしまう。だから経済活動をどれだけ犠牲にしても感染者を無くさなければならない」と極度に恐れる人と、「コロナはただの風邪」といってカラオケに行って歌いまくったり、居酒屋で騒いている人達がいて、世の中が分断されてしまうことを恐れています。

陽性者数を限りなくゼロに近づける努力をするのか、ある程度までの発生は許容するのか、どのような方向性を目指すのかを社会で統一する必要があるのではないかと思慮しています。