2018/01/19
防災・危機管理ニュース

東京都は19日、いわゆる「女性版東京防災」こと、女性視点の防災ブック「東京くらし防災」を3月1日から無料配布すると発表した。スーパーや美容院、ネイルサロンなど女性がよく利用する場所に設置する。また女性の防災人材育成についての検討会議の最終報告書も発表。3月3日に港区の東京ミッドタウンで「防災ひな祭り」と題したイベントを開催。女性防災人材育成カリキュラムのキックオフイベントとする。
「東京くらし防災」は2015年発行の「東京防災」と同じサイズのB6版で164ページ。主な内容は(1)事前の備え(2)発災時の行動(3)被災後の生活。事前の備えでは備蓄や家具の固定、外出時や子どもの被災に役立つもの、地域コミュニケーションの重要性などを伝える。発災時の行動は主に身を守るためのものを解説。被災後の生活では避難所での問題について、着替えや授乳、衛生といった女性ならではの問題にフォーカスする。
「東京防災」は全世帯に配布だったが、「東京くらし防災」は特定の場所に設置。都立・区市町村立施設のほか、スーパーや美容院、ネイルサロンなど女性がよく利用する場所や郵便局、交通機関などに置かれる予定。すでにイオングループ、日本郵便、東京メトロなど大手企業のほか、美容院やネイリストの業界団体が配布協力することを決めている。2月1日からさらに協力事業者を募集する。「東京防災」でも行っているダウンロード配布も今後検討する。
「女性の視点からみる防災人材の育成検討会議」の報告書では、避難所や職場でリーダーとなる女性人材の育成に向け、カリキュラムを実施する方針をまとめた。基礎編の「防災ウーマンセミナー」と応用編の「防災コーディネーター育成研修会」を実施。どちらも働く女性向けの「職場編」と専業主婦などを対象にした「地域生活編」に分けて実施する。
基礎編は災害に関する基本的な知識として、発災時の身の安全の確保や避難行動、備蓄や家具固定といった事前の備えなどを学ぶ。応用編では避難所や職場で自分の身を守るだけでなく、課題解決を図れるリーダー的人材育成を進める。防犯や衛生管理など避難所での課題を知り、行動を考える。職場については発災後の一斉帰宅の抑制と会社内に3日間滞在するにあたっての問題解決、帰宅困難者受け入れの際の準備や配慮などを学ぶ。
3月3日に人材育成のキックオフイベントとして「防災ひな祭り」を開催する。若年層へのPRとしてモデル・松島花さんのトークショーや、避難所の狭い場所でも体を動かせる「防災ヨガ」の紹介も実施。「東京くらし防災」を来場者にプレゼントする。人材の育成検討会議での資料によると、カリキュラム基礎編は今年度中の開始が見込まれている。
小池百合子知事は19日の記者会見で「よりきめ細やかな災害対応のため、女性の視点や発想を生かす」と説明。人材については「地域や企業で防災活動の核となって活躍する女性防災人材の育成を進める。女性リーダーがいるかいないかで全く違ってくる」と重要性を強調した。また「災害はいつ何時起こるかわからない。(被災する)地域・場所・時間によって役割や求められるものは違うが、いろいろなケースを想定し、備えられるリーダーを育てていきたい」と意気込みを語った。
導入へ注力する乳児用液体ミルクについては「『東京くらし防災』に掲載する。災害現場のニーズがあるからだ」と説明。現状では食品衛生法に規定がなく、国内で製造や販売ができないことや、少子化が進む中でメーカーが投資を行うことのリスクについては「企業の経済原理に合うようニーズを作る」と述べた。小池知事は国へ規格作りを働きかけるだけでなく、メーカーが参入しやすいよう備蓄などで液体ミルクの需要作りを進めていく方針。
■ニュースリリースはこちら
「女性視点の防災ブック「東京くらし防災」の作成及び協力事業者等の公表・募集について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/06.html
「女性の視点からみる防災人材の育成検討会議の最終報告について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/08.html
「東京の女性が一歩踏み出す日『防災ひな祭り』の開催について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/19/07.html
■関連記事「東京都、九都県市で液体ミルク導入提案」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4130
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方