自社の事業に対する未来の気候リスクをどう評価するか(写真:写真AC)

■簡便なシナリオで考えてみる

BCPなりの方法を用いて2つの気候リスク(移行リスクと物理的リスク)を評価するには、どうすればよいでしょうか。真っ先に必要となるのはTCFDと同様、「シナリオ」です。BCPで言うところの「震度6強の地震が発生する」というシナリオ。これを地震の「リスク」と呼ぶか「シナリオ」と呼ぶかは文脈次第です。

筆者が提示する次の2つのシナリオは、TCFDが提唱するリスクの可視化手法とはかけ離れたきわめてイージーなものではあります。しかし中小企業が自社にとっての気候リスクや事業への影響を想定するヒントぐらいにはなるのではないでしょうか。

・2030年代半ばに新規ガソリン車の販売が禁止される
・2030年代半ばに台風・豪雨・熱波が現在の2倍に増えている
ガソリン車の販売の禁止(写真:写真AC)

前者の「2030年代半ばに新規ガソリン車の販売が禁止される」は、低炭素経済への移行に関連する「移行リスク」を捉える上で役立つものと考えます。繰り返しますが、移行リスクは気候変動に係る国の政策や規制、技術開発、市場動向、市場による企業の評価がもたらすリスクです。

豪雨や熱波などの倍増(写真:写真AC)

後者の「2030年半ばには台風・豪雨・熱波が現在の2倍に増えている」は、気候変動が引き起こす物的な被害や損害、つまり「物理的リスク」を捉える上で使えるシナリオです。物理的リスクはさらに、「急性」と「慢性」の2つのリスクに分類されます。