2018/01/26
防災・危機管理ニュース

東京都は26日、2018年度予算案を発表した。一般会計は今年度比1.3%増の7兆460億円。災害対応力の強化については、千代田区大手町にある東京消防庁本部庁舎の移転建て替えへ、隣接地取得費を先行計上する影響で236.8%増の357億円となった。注目された都民提案事業は、防災分野では自転車整備支援事業が選ばれた。
東京消防庁本部庁舎は1976年竣工。移転先として、都では隣接する国有地である政府刊行物サービス・センター跡地とさらにその隣の気象庁の土地を候補にしている。気象庁は港区虎ノ門へ2020年移転の予定で、新庁舎の建設が進められている。都ではまず2013年に閉店となった刊行物センター跡地の取得を目指し、先行して240億円を2018年度予算に計上することとした。

災害対応力の強化では、都民提案事業として自転車整備支援事業で1億円を計上する。災害時の移動手段として重要な自転車の点検・整備の推進や、安全利用の普及・啓発を行う。ほかに新規事業として、移動防災教室車を2台増やすため1000万円、災害情報のSNSからの抽出を行う早期情報集約システムの整備に900万円、豊島区にある池袋防災館の夜間運営に700万円を計上する。池袋防災館では運営の延長を行うほか、夜間に発災した際の就寝時の体験ができるナイトツアーを実施する計画。また帰宅困難者対策は今年度比39.6%増の13億4000万円と大幅な増額。民間の一時滞在施設への購入経費の補助や帰宅困難者対策条例の周知など、対策を強化する。
まちの安全・安心の確保は12.7%減の71億円。新規事業として「統合機動部隊(仮称)」と題した、大規模テロや災害に対応する部隊を東京消防庁に創設する。2億5300万円を計上する。指令管制やモニターなどを備える指揮統制車(コマンドカー)と装甲仕様で悪路も苦としない救出救助車を1台ずつ配備する計画。
無電柱化の推進は10.0%増の288億円。新規事業として都営住宅の外周道路等の無電柱化に4000万円、土地区画整理事業助成における無電柱化で3億円を計上。災害時の避難場所としての都営住宅の安全性を高め、避難経路や緊急車両の通行機能確保へ外周道路の無電柱化を実施。再開発などの際の土地区画整理事業で無電柱化も行う場合、助成額を加算する。都道・臨港道路の無電柱化には274億円を計上している。区市町村への補助は27.1%増の10億7300万円。対象区市町村を26から43に拡大。区市町村道での無電柱化を促進する。都では無電柱化基金から145億円を取り崩し、関連費用に充てる。
小池百合子知事は26日の記者会見で災害対策について「ハード・ソフト両面から都民の活力の基盤となる安全・安心を確保する」と説明した。都民事業提案については「応募255件は集まった方だと思う。提案された事業によって生じた結果をまた都民に知らせることも大事だ」と述べた。
■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/21.html
■関連記事「都民が防災事業提案し来年度予算に計上」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/3726
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方