■「Do」はここがポイント

次はPDCAの「Do」の実行です。先ほど「参加者にレポートを提出させる」と「毎回訓練の想定を変える」の2つの対策オプションを導きましたが、このケースでは最終的にどちらの方法を選ぶかはあまり意味を持ちません。むしろ両者を組み合わせて試してみるのがベターでしょう。具体的な実行手順は次の通りです。

(1)参加者にレポートを提出させる
これまでの「やりっ放し」の訓練を改めました。参加者全員に用紙を配布し、気づいたことを記入してもらい、後日これらの意見を掲示して全社員が閲覧できるようにしました。

(2)毎回訓練の想定を変える
火災避難訓練などは毎年「給湯室」からの出火という同じ想定で行っていましたが、さまざまな想定外の出火場所(もちろん現実的に起こり得る場所として)を盛り込むことにしました。

そして(1)と(2)を取り入れた形で新しい訓練を実施したところ、次のことが分かりました。まず、今回は方法や手順を見直した直後の初めての訓練なので、参加率こそ前回と変わりませんでしたが、これまでとは異なる判断と行動が求められた参加者たちの間に、良い意味で緊張感が漂っていたことです。

また、訓練を体験した感想を書いてもらったところ、意外に多くの人からさまざまな意見が出されたことです。訓練のやり方についての要望や訓練から学んだこと、自分自身の反省点などなど。中には事務局も「なるほど!」と感心するような防災上の盲点を指摘してくれた意見や、「次回からは積極的に訓練に参加したい」と書いた参加者も少なくありませんでした。

■「Check」→「Act」の判定はどうなる?

前のステップでは、「Plan」の2つの対策オプションを「Do」を通じて実施したことにより、参加者の間にいくつかの変化をくみ取ることができました。次はこれらの変化をなるべく客観的に評価する「Check」のステップです。この事例における「Check」のポイントは、新しい方法や手順を通じて「訓練のマンネリ化を防ぐこと」はできたか、目標として設定した「訓練の参加率を前年比2割アップする」は達成できたかの2つです。

まず、「訓練のマンネリ化」を防止できたかどうかについては、事務局の観察と参加者の提出したレポートを集計した結果から推察できます。全体として前回よりも多くの参加者が緊張感を持って訓練に臨んだことが分かりました。また、全員の意見が社内掲示されたことで参加意識が高まったほか、「これまでの訓練とは少し違うぞ」という脱マンネリ感が得られたことは間違いありません。

また、「訓練の参加率を前年比2割アップする」という目標については、「次回以降の訓練にも積極的参加したい」という意見も少なからず見られました。このことから、今回はともかく、次回以降の訓練で達成できるのではないかと推察することができます。

さて最後は「Act」の判定です。マンネリ化を防ぐ2つの対策は、概ね功を奏しましました。また、参加者レポートから次回以降の訓練への参加率向上も見込めそうです。とは言え、これだけでは「ゴール」と見なすわけにはいきません。本当にうまくいくかどうかは次回以降の訓練で明らかになるからです。よって、訓練事務局の総合的な「Act」の判定は、次のようになりました。

今回の参加者の要望・意見をPDCAの次の「Plan」に取り入れながらこの新しい方式の訓練を次回も引き続き実施し、その効果を検証することにする。
 

(了)