2018/02/22
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』
■「Do」はここがポイント
次はPDCAの「Do」の実行です。先ほど「参加者にレポートを提出させる」と「毎回訓練の想定を変える」の2つの対策オプションを導きましたが、このケースでは最終的にどちらの方法を選ぶかはあまり意味を持ちません。むしろ両者を組み合わせて試してみるのがベターでしょう。具体的な実行手順は次の通りです。
(1)参加者にレポートを提出させる
これまでの「やりっ放し」の訓練を改めました。参加者全員に用紙を配布し、気づいたことを記入してもらい、後日これらの意見を掲示して全社員が閲覧できるようにしました。
(2)毎回訓練の想定を変える
火災避難訓練などは毎年「給湯室」からの出火という同じ想定で行っていましたが、さまざまな想定外の出火場所(もちろん現実的に起こり得る場所として)を盛り込むことにしました。
そして(1)と(2)を取り入れた形で新しい訓練を実施したところ、次のことが分かりました。まず、今回は方法や手順を見直した直後の初めての訓練なので、参加率こそ前回と変わりませんでしたが、これまでとは異なる判断と行動が求められた参加者たちの間に、良い意味で緊張感が漂っていたことです。
また、訓練を体験した感想を書いてもらったところ、意外に多くの人からさまざまな意見が出されたことです。訓練のやり方についての要望や訓練から学んだこと、自分自身の反省点などなど。中には事務局も「なるほど!」と感心するような防災上の盲点を指摘してくれた意見や、「次回からは積極的に訓練に参加したい」と書いた参加者も少なくありませんでした。
■「Check」→「Act」の判定はどうなる?
前のステップでは、「Plan」の2つの対策オプションを「Do」を通じて実施したことにより、参加者の間にいくつかの変化をくみ取ることができました。次はこれらの変化をなるべく客観的に評価する「Check」のステップです。この事例における「Check」のポイントは、新しい方法や手順を通じて「訓練のマンネリ化を防ぐこと」はできたか、目標として設定した「訓練の参加率を前年比2割アップする」は達成できたかの2つです。
まず、「訓練のマンネリ化」を防止できたかどうかについては、事務局の観察と参加者の提出したレポートを集計した結果から推察できます。全体として前回よりも多くの参加者が緊張感を持って訓練に臨んだことが分かりました。また、全員の意見が社内掲示されたことで参加意識が高まったほか、「これまでの訓練とは少し違うぞ」という脱マンネリ感が得られたことは間違いありません。
また、「訓練の参加率を前年比2割アップする」という目標については、「次回以降の訓練にも積極的参加したい」という意見も少なからず見られました。このことから、今回はともかく、次回以降の訓練で達成できるのではないかと推察することができます。
さて最後は「Act」の判定です。マンネリ化を防ぐ2つの対策は、概ね功を奏しましました。また、参加者レポートから次回以降の訓練への参加率向上も見込めそうです。とは言え、これだけでは「ゴール」と見なすわけにはいきません。本当にうまくいくかどうかは次回以降の訓練で明らかになるからです。よって、訓練事務局の総合的な「Act」の判定は、次のようになりました。
(了)
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』の他の記事
おすすめ記事
-
ランサムウェアの脅威、地域新聞を直撃
地域新聞「長野日報」を発行する長野日報社(長野県諏訪市、村上智仙代表取締役社長)は、2023年12月にランサムウェアに感染した。ウイルスは紙面作成システム用のサーバーとそのネットワークに含まれるパソコンに拡大。当初より「金銭的な取引」には応じず、全面的な復旧まで2カ月を要した。ページを半減するなど特別体制でなんとか新聞の発行は維持できたが、被害額は数千万に上った。
2025/07/10
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/08
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方