2021/04/13
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉
企業の業種・業態、規模、地域は違っても、危機管理担当者の悩み、やりがい、目標、思いには共通点が数多くある。垣根を越えてそれらを共有することは、個々が直面する課題解決のヒントにもなるはずだ。防災やBCP、リスクマネジメントの現場をまわすリーダーたちに今の取り組みと仲間へのアドバイスを聞き、Q&Aで紹介するシリーズの第2弾。
危機管理をアップデートするために

臼井国際産業(静岡県清水町)
CSR推進室参与 堰沢一郎氏
堰沢氏のアドバイス
❶ 従業員へのアンケートは、リスク教育の格好の機会。リスクマネジメントのPDCAに組み込んでまわす。
❷ アンケートは感覚的な質問ではなく、定量的・定性的な指標を設定して自ら考えさせるとともに、結果を分析できるようにする。
❸ 風水害やコロナなどの危機を実感する時代は、社内の意識改革の機会でもある。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
自動車メーカーの生産ラインを止めない
――会社の概要を教えてください。
自動車部品のグローバルサプライヤーとして、世界各国の自動車メーカーに主要部品を納入しています。国内拠点は本社のある伊豆を中心に10工場、ほかサテライト拠点が全国に12カ所、海外はアジア、アメリカ、ヨーロッパに14のグループ会社があり、国内の全自動車メーカー、欧米の大手自動車メーカーと取り引きしています。従業員は730人、グローバルでは約1万人です。
当社のミッションとしては、利益を社会に還元することはもちろんですが、そのためには計画的にモノを作ってタイムリーにお客さまに納入し信頼を得る。つまり、お客さまの生産ラインを止めない。そこを目指してリスクマネジメントをまわし、万が一の際の対応に備えるべく活動しています。
――主にどのような活動を行っているのですか。
グローバルでのリスクマネジメント活動が主業務です。マネジメント体系図を作成し、これにそってPDCAをまわしています。
具体的にはグループ従業員に対し、国内は全従業員、海外はスーパーバイザー以上ですが、リスク評価アンケートを実施。これをもとにグローバルにおけるリスクマネジメントのテーマと拠点ごとのテーマを選定し、それぞれ目標を定め、アクションプランを策定して運用しています。

リスク評価アンケートは、CSR推進室が洗い出した106のリスク、戦争・テロから品質不良、人材確保まで広範にわたりますが、それぞれの「影響度」「発生頻度」「コントロール度」を個々の従業員が評価。そこで特に重大と位置付けられたリスクにテーマを絞ってアクションプランを立て、各拠点に活動してもらっています。
活動の内容と成果は年2回、グローバルリスクマネジメント委員会で報告。そこにCSR推進室としてコメントを出します。パンデミックで中断していますが、コロナが始まる前は海外の拠点を年1回は回り、リスクマネジメントとはどういうものか、リスクアセスメントとはどういうものかの指導も行っていました。
私はもともと品質保証の担当で、品質管理システムの運用や監査、従業員教育のため、すべての海外拠点をまわってきた経験があります。その点では、品質マネジメントがリスクマネジメントに置き換わっただけともいえる。CSRの担当になって7年目ですが、比較的ストレスなくやっています。
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉の他の記事
- 常に問う「本当に命を守る行動が取れるのか」
- 「リスク評価アンケート」を従業員への教育活動に
- BCPはより戦略的に、複数シナリオで準備
- 新しい力でリスクマネジメントのDXを起こそう
- 3つのスキルと3つのワークを意識して
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方