2021/04/08
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉
新たに防災・BCP・リスクマネジメントの担当になった方へ
根来諭(ねごろ・さとし)
株式会社Spectee取締役COO
45歳
VUCAの時代とは
現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われます。
VUCAとは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の略で、次に何が起こるのか見通しづらく、不安定な環境のことを言い表しています。
このような時代に、リスクを見出し、分析し、対策を打つリスクマネジメントの業務が企業や組織にとって致命的に大切だということは、昨今の新型コロナウイルスにおける苦境を見るに、想像に難くありません。
社会が変わりリスクが多様化している
なぜ、VUCAと呼ばれる状況になっているのか。それは社会や技術の発展、それにともなう人々の価値観の変化が急速に起きているからにほかなりません。それにより、対応すべきリスクもこれまでより圧倒的に多様化します。
サービスや商品がデジタル化・オンライン化することで、サイバーリスクや個人情報の漏洩リスクは高まっています。ソーシャルメディアの浸透によって、企業のレピュテーションリスクにも気を払わなければなりません。働き方改革が進めば、長時間労働やハラスメントにともなう労務リスクも大きくなるでしょう。
このような状況の中、リスク部門の担当者も、社会の変化に合わせて意識や仕事のやり方を変化させていく必要があります。現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)といって、デジタル技術やデータを駆使してビジネスモデルや組織のあり方を革新することが社会全体の大きなテーマとなっていますが、リスクマネジメントの世界でもDXを起こす必要があります。
エキサイティングに、やりがいを持って
発生した危機に対応するクライシスマネジメントにおいては、当社がAI技術を活用して発生した事象を早く正確に覚知する「Spectee Pro」というサービスを提供しています。損害保険会社各社も最新のテクノロジーを取り込んで、リスク評価の最適化や保険金支払いの迅速化に取り組んでいます。
現在整備が進む5G通信網や、あらゆる場所にあるモノがインターネットでつながるIoT(モノのインターネット)の進展によって、直近に起こる事象の未来予測(例えば水害の発生)もどんどんできるようになっていくでしょう。
こうした新しいテクノロジーを評価し、自らの業務に取り込んでいくことで「リスクマネジメントのDX」を実現させていくことが重要です。
見方を変えれば、非常に刺激的でエキサイティングな時代と言えるでしょう。新しくリスク部門での仕事を始める方々が、やりがいを持って毎日の業務に取り組まれることを祈念します。
【オピニオン】新たにリスク部門に着任した人たちに贈る言葉の他の記事
- 常に問う「本当に命を守る行動が取れるのか」
- 「リスク評価アンケート」を従業員への教育活動に
- BCPはより戦略的に、複数シナリオで準備
- 新しい力でリスクマネジメントのDXを起こそう
- 3つのスキルと3つのワークを意識して
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/12/05
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方