2016/08/08
誌面情報 vol50
Q.テロから2年が経ち、さらにセキュリティを強化しているのですね。
A.リスク評価が見直され、ゴールエリアのセキュリティがより強化されました。たとえば、今回の大会では、ゴール近くの地下鉄の駅は始発から封鎖され、路線によっては電車自体も動いていませんでした。
警察官の数は倍増され、ゴールエリアを中心にCCTVを100台以上増設し監視体制を強化していました。モニタリングを担当するのはボストン市警の警察官で、映像を目視しながら、不審な動きなどを監視していました。
ゴールエリアは高い塀で囲まれ、観客はゴールの手前までしか入れず、周辺住人が通過する際には厳重なIDチェックと荷物検査を実施するようになりました。周りのビルの屋上には狙撃チームも配置され、上空はヘリが飛び回っていました。コースと観客を隔てるフェンスはボストンでは自由に動かせないよう固定されています。有刺鉄線が張られていることもありました。
Q.CBRNE対策はどうでしょう?

A.どこで何があっても確実に対応できるようにCBRNE専門チームが編成されています。具体的には、爆発物に関しては、「爆発物探知犬(+ハンドラー)」とボストン市警の「爆弾処理班」、CやBに関しては軍の「CBRNE専門部隊」と「HAZMAT対応の専門部隊」という4つの組織で1チームを構成しています。
ボストンマラソンの警備体制で特に印象的だったのは、爆発物探知犬があらゆる所にいたことです。ボストン市警以外の探知犬も多く動員されていました。人と荷物は探知犬によって徹底的にスクリーニングされ、どこを歩いても犬と出会いました。
◆ロンドンマラソン
Q.ロンドンは、2005年に同時多発テロで大きな被害を受けましたが、2012年の五輪大会は、テロを防ぐことができました。マラソンでの危機管理体制は?
A.ピリピリした雰囲気のボストンとは異なり、約3万8000人のランナーが参加したロンドンマラソンはお祭りのような雰囲気でした。ボストンマラソンでは禁止されていたメイクや着ぐるみもOKで、ランナーは色とりどりの服装で走り抜けていきます。グリニッジ公園をスタートし、タワーブリッジ、ロンドン塔などの観光地を回り、ゴールはバッキンガム宮殿です。
当日はボストン以上に数多くのヘリが飛んでいましたが、地下鉄も通常運行、警察車両も目立つ所に駐車しておらず、爆発物探知犬は見かけませんでした。
マラソンのリスク評価は民間のコンサル会社が時間をかけて実施するそうです。運営だけでなく、警備や交通の専門家、技術者などさまざまな役割を持つ人たちを交えチームを作り、時間をずらして何度も現場に足を運び、日々異なる事象を確認し、リスク評価を行っていきます。リスク評価の結果、ゴールエリアはボストンマラソンと同等レベルの対策がとられています。しっかりと固定された高いフェンスが設置され、各ポイントのセキュリティチェックは軍により行われていました。ロンドンはCCTV数が世界一ということで有名です。普段は地域ごとのモニタリングセンターが監視していますが、マラソンのような大規模イベント時は、コントロールセンターに統合されます。
ロンドンにはSecured by Design(デザインによる安全確保)という考え方があります。最初から、防犯・テロ対策を考えて町をデザインし、施設を建築します。ガイドラインを作成しているのは警察OBの専門チーム。大規模な建物だけではなく、一般的な住居にも立地にあった防犯をアドバイスしています。
また、欧米では車を使った車載爆弾テロの対策が進んでいます。地下鉄や空港、重要な建物や地域の周りには車の進入を止めるためにボラードが埋め込まれています。地上に出ている部分は1mほどですが、地下は深くまで埋め込まれ、大型トラックの進入さえも確実に止められるようになっています。あらゆるリスクすべてに厳重に対処することはできません。何が最大の脅威なのかを評価した結果、爆弾テロに重点的な対策を打っているのでしょう。
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