2016/08/18
誌面情報 vol50
海外におけるオリンピックや大規模なスポーツ大会の危機管理体制はどのようになっていたのか。海外の取り組みから、日本が学びとれる点はないか? 2012年のロンドン五輪、来年のリオデジャネイロ五輪、そして2013年4月に連続爆弾テロ事件が起きたボストンマラソンの危機管理事例を振り返る。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年7月25日号(Vol.50)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。人名・役職などは当時のままです。(2016年8月19日)

2012年のロンドン五輪では、文化・メディア・スポーツ省にオリンピックの総合調整窓口となるGOE(Government Olympic Executive:政府オリンピック実行委員会)が設置され、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と同じ位置づけにあたるLOCOG(ロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会)と調整して、準備・運営にあたった。
現場での危機管理を仕切ったのは大ロンドン庁(GLA=Greater London Authority)。ロンドンの自治は、大ロンドン庁のもと、City of Londonを含む33の特別区で構成されている。
2012年に取材した際、ロンドン特別区に出向して危機管理の業務に携わっていたというPWCのLeigh Farina氏は「各特別区では、オリンピックゲームに備え、(2012年の)2年ほど前から3カ月に1回の割合で合同訓練を実施している。最初は、各区の計画がしっかりできているかを検証することから始めたが、直近に行われた訓練では、1つの危機案件について、全員が一緒に対応できるまで成熟度があがってきた」と話していた。

Farina氏によると、GLAにはロンドン全体の特別区の危機管理を統括する危機管理センター(command centre)が設置されているが、過去に危機管理センターが指揮を執って対応にあたったのは2005年の同時爆破テロぐらい。しかし、オリンピック期間中は、交通の不具合や、不審物の発見など、その日に起きたことを、すべて危機管理センターにレポートすることが決められているため、訓練には、特別区をはじめ、警察や消防、病院など50を超える関連機関が参加し、組織間の連携の向上を図ったという。
誌面情報 vol50の他の記事
- 世界に誇る危機管理ビジネス 行動検知・生体認証・ドローンなどで2000億目指す
- 【東京オリンピックの危機管理】 海外の五輪・スポーツイベントから学ぶ
- 【東京オリンピックの危機管理】 オールジャパンで臨む危機管理体制
- 調達が民間企業の最大リスク!?
- 安全神話からの脱却 オリンピックを脅かす危機
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方