2021/06/25
非IT部門も知っておきたいサイバー攻撃の最新動向と企業の経営リスク
恩恵
サイバー攻撃による被害は残念ながら既に多く発生しており、そしてこれからも増え続けていく。
私たちの生活や仕事の仕方は、コロナ禍のこの一年で大きく変わったが、それにはITの力によるところが大きい。在宅勤務の推進や、デジタルトランスフォーメーション(DX)、IoTなどの活用によって、私たちは物理的な制約を超えたコラボレーションを実現してきた。
このような社会の変革は、同時に悪意ある者たちにも同じような利便性をもたらしてきた。そして、さらに私たちがITへの依存度を高め続けていくことで、サイバー空間で生じた問題から受ける影響も大きくなっている。
そのため、今回発生したパイプラインへの攻撃のように、システムを人質にとって身代金を要求する手口では身代金の額も年々上昇しており、その手口そのものによる被害も増加し続けている。
もちろん、ITは危ないから使うのをやめましょうと申し上げたいわけではない。ITによる恩恵を享受するとともに、現代社会が既に直面しているこのような状況を理解し、その対策や対応に取り組んでいくことが重要である。
想定
日本では多くの人たちが、火災や地震の際の避難訓練を経験しておられることと思う。この訓練を通して私たちは迅速な行動をとり、被害を最小限に食い止めるための術を学んできた。
では、サイバーリスクに対してはどうだろう?
考えたことはないという方も一定数おられるのが実情だ。
しかし、サイバーリスクとはクリエイティブにつくり出されているいるリスクである。悪意ある者たちは想像力を働かせ、人為的に脅威をつくり出している。そのため、私たちもサイバーリスクについて学び、リスクを低減するための対策やサイバー攻撃を受けた場合の対応について考えていかなくてはならない。
今回のパイプラインへのサイバー攻撃を受けて、ジョー・バイデン大統領はサイバーセキュリティーを改善し、連邦政府のネットワークを保護するために大統領令へ署名した。*2
ここでは多要素認証と暗号化の導入、サプライチェーンセキュリティーの改善、サイバーセキュリティー安全性審査委員会の設置(政府と民間部門で構成される)といったことに焦点を当て、検知・調査・復旧機能の改善とインシデント対応の際の「プレイブック」開発を促している。
「想定」ができているからこそ、迅速な行動をとり、被害を最小限に食い止めることができるからだ。
そして、あらゆる環境がITによってつなぎ合わされている現代社会だからこそ、一社一社そして一人一人がサイバーリスクについて今一度考えていかなくてはならない。
出典
*1 https://us-cert.cisa.gov/ncas/current-activity/2021/05/11/joint-cisa-fbi-cybersecurity-advisory-darkside-ransomware
*2 https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2021/05/12/executive-order-on-improving-the-nations-cybersecurity/
本連載執筆担当:ウイリス・タワーズワトソン Cyber Security Advisor, Corporate Risk and Broking 足立 照嘉
非IT部門も知っておきたいサイバー攻撃の最新動向と企業の経営リスクの他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方