先進企業のディスコ考案

BCM活動に全社的に取り組んでいる半導体加工装置製造メーカーのディスコ(東京都大田区)は、社員の防災教育のツールとして、家庭などで楽しく備蓄について考えることができる「魔法のマス」ゲームを考案した。 

日常的に使う生活用品や娯楽品、家電、食べ物、飲み物などがイラストで描かれた備蓄品カードと、1枚の「魔法のマス」を使って、自分に本当に必要な備蓄品を選んでいくというもの。魔法のマスには、横軸に使う回数として「常に使う」「1日で数回使う」「7日で数回使う」「1カ月で数回使う」の4段階、縦軸には我慢の度合いとして、「我慢できる」「ちょっと我慢できる」「ちょっと我慢できない」「我慢できない」の4段階が示されており、16マスが並計べられている。 

ゲームの進め方は、家族で実施する場合、全員にカードと「魔法のマス」のセット(図)を配布するところからスタート(カードと「魔法のマス」はPDFで誰でも簡単にプリントアウトできる)。 

まず朝起きてからこれまでに使ったものをカードの中で選んでもらい、そのカードが、魔法のマスのどこに該当するかを考え置いていくだけ。例えば、選んだカードが歯ブラシだったら、横軸が「1日で数回使う」、縦軸が「ちょっと我慢できない」のマスに置く。トイレだったら横軸が「1日で数回使う」、縦軸が「我慢できない」のマスに置く(いずれも筆者の場合)、といった具合だ。もちろん1人でやることもできる。 

用意されたカードの中で、足りないものがあれば、新しいカードを作ってもいい。人に言えないプライベートのものなら「ひみつ」カードを使うことができる。 

「魔法のマス」は、右上の角が横軸「常に使う」、縦軸「我慢できない」に該当し、備蓄としては最も重要な位置づけになる仕組み。右上を中心に、赤色、黄色と色分けされており、「赤色」が備蓄に不可欠なもの、「黄色」が次に必要なものと可視化されている。 

家族などグループ単位でゲームを行う場合は、置いたカードに対して、採用、不採用を全員が言い、最も採用を多く獲得した人が勝ち。ただし、不採用の場合は必ず理由を言って納得してもらうことが条件。 

「備蓄にはお金もかかりますし、スペースも必要ですから、当然、限度があります。限られているからこそ、本当に自分達に必要な備品は何かを知る必要があると思います。また、家族一人ひとりが必要と思っているモノは実は異なります。家族それぞれがどんなことを考えているかを共有することも大切だと考えています」と、同ゲームを開発したBCM推進チームリーダの渋谷真弘氏は語る。 

最初は反対しても、会話をすることで、必要(採用)と考え直すものもあるという。「例えばお子さんがゲームが必要と言えば、最初は両親は反対するかもしれませんが、ゲームがあれば避難所生活も我慢できるということなら家庭として備蓄、もしくは直ぐに持ち出す品として考えるべきかもしれません」(渋谷氏)。 

選んだカードに対して、本当に使えるかという視点で質問をすることも大切だ。防災用トイレを備蓄していても、トイレットペーパーがない、夜使うためのランタンが無いなど、備蓄を見直すきっかけになる。