9.11(セプテンバー・イレブン)と言えば、2001年9月11日の米国における同時多発テロ事件を思い起こす人が多いだろう。事件後には、同名の映画も作られた。あれから、もう20年が過ぎた。今回とりあげるのは、この事件ではなく、その前年(2000年=平成12年)に日本で発生したもう一つのセプテンバー・イレブン、「東海豪雨」である。
2000年9月11日からその翌日にかけて、名古屋市を中心とする東海地方は集中豪雨に見舞われた。一般に「東海豪雨」と呼ばれるこの豪雨による災害は、人口200万人以上を擁する政令指定都市名古屋を襲った典型的な都市型水害として注目された。この豪雨による死者は10人、負傷者115人、床上浸水2万2894棟、床下浸水4万6943棟、被害総額は約8500億円に達した。
総降水量
図1に、2日間(2000年9月11日~12日)の総降水量の分布を示す。知多半島の北部に極大域があり、阿久比(あぐい)町では622ミリメートルを観測した。総降水量500ミリメートル以上の領域が名古屋市の中心部にかけて広がり、これが東海豪雨の中心域である。
図1では、雨量観測点のない伊勢湾上にも等値線を描いた。伊勢湾でどれぐらいの雨が降ったかのデータはないが、愛知県側の400ミリメートルの等値線が、伊勢湾をまたいで三重県側の400ミリメートルの等値線につながることは間違いないであろう。この等値線の形状からわかるように、愛知県の総降水量の多い領域は、伊勢湾を越えて三重県に連なっており、これが東海豪雨の実像を表す。すなわち、紀伊半島の南東部(三重県南部)から、伊勢湾を経て、名古屋市に至る位置に、発達した積乱雲の列が形成された。
東海豪雨では、名古屋市を中心とする地域の被害が甚大であったために、その周辺域の被害が見過ごされがちであるが、豪雨被害は広い範囲に及んでいた。図1では、岐阜県南東部から愛知県東部にかけての丘陵地帯にもう一つの極大域が見られ、総降水量が400ミリメートルを超えている。この地域での豪雨被害も決して小さくなく、岐阜県ではこれを「恵南(けいなん)豪雨」と呼んで語り継いでいる。
そのほか、図1の地図範囲の大部分で、総降水量が200ミリメートルを超えている。総降水量200ミリメートルといえば立派な大雨である。東海豪雨は、広範囲の大雨の中に、顕著な集中豪雨が組み込まれたような様相を呈した。
    
    
    
    
     
    
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