過去の震災の教訓を生かす

東日本大震災では、当市の職員が何人か支援に行っているんですが、熊本地震が起きる前に、現場でまとめた課題を機能的に生かせるようにするための分析がやれていなかったことは大きな反省です。
地震直後に、2007年の中越沖地震で被災した柏崎市の職員に、当時の市の広報資料を持ってきていただいたのですが、これはとても参考になりました。自治体の規模も同じぐらいでしたし、発災1週間以内にはこういう通知を全市民に配りました、2週間目にはこれを配りました、3週間目はこれということが、全部記録に残っていたので、とても助かりました。
他の自治体からの支援としては、やはり、経験あるマンパワーが一番助かります。今でも土木建築技術者が不足していますので何人かに来てもらっていますが、これは本当にありがたいことで、経験あるマンパワーを派遣する仕組みなどが必要だと思いました。

柏崎市広報資料集表紙

合併特例債の期限延長

復興に関しては、すぐに国に伝えないといけなかったことは、当市は12年前に合併しているのですが、平成31年までで合併特例債の適用期限が切れてしまうめ、期限の延長をお願いしています。これまでは計画的に特例債を使ってハードの整備を進めてきましたが、震災により、復旧工事に追われて、計画通りに特例債を使えなくなってしまっています。
やはり復旧・復興の財源に関することは課題が多く、例えば、国の偉い方がお見えになって「復旧予算も組んだので、あとは市町村判断でどんどん復旧を進めてください」と言われるのですが、会計検査等もあるため無茶な事業はできず、簡単ではないのです。使うだけ使って、後で市民の方に返してくれと言えるはずもないわけですから。最後まで国が面倒を見る形でやらせてもらいたいというのが正直な感想です。

 

守田憲史氏 プロフィール

■生年月日
昭和34年5月12日

■学歴
昭和58年3月 中央大学法学部卒業

■職歴
平成3年   司法書士事務所設立
平成15年4月 熊本県議会議員(3期)
平成25年2月 宇城市長就任

本インタビューから学ぶ危機管理トップの心得

冒頭にも書きましたが、このインタビュー内容だけでトップの行動の是非を検証することはできません。ただし、常にトップ、あるいは危機管理担当者が考えておくべきポイントはいくつかあったと思います。ここでは、「トップは現場に行くべきか」についての私見を述べさせていただきます。※あくまで個人的なもので、検証報告書の内容とは一切関係がありません。

現地に任しながらも現地をサポートする
「私は市民から選ばれた首長であり、政治家ですから、多くの市民が家にいられず避難所に押し寄せる状況の中で、現場に出向いて”皆さん安心してください”と言わなくてはいけなかったとも思うのです」。この言葉を聞いた時、首長としてのトップの悩みがよく分かった気がします。実際に災害が起きた場合、その最前線で災害対策の指揮を執るのは被災した地域の市町村長です。一方、その市町村長は、政治家でもあります。市民から選ばれた政治家となれば、市民に対して安心を呼び掛けることは非常に重要なことで、他の首長も口にしていますが「メディアを通じてもっと情報発信すべきだった」ということと共通しています。しかし、メディアはキー局主導になっていますから、災害対策本部会議で記者発表をしても、なかなかニュースなどで取り上げられない。ならば、自分の足で現場に行き、被災者に一刻も早く声をかけることが大切だという心境になるのはわかる気がします。

一方で、政治家が現地を訪れることには賛否両論さまざまな意見があります。現地の状況を施策に反映させるためには現地の状況を実際に見て、感じておくことが必要という意見もありますし、被災した地域住民に勇気や希望を与える上で重要という人もいるでしょう。他方で、現場に負担をかけるだけとう指摘もあります。何よりも、初動については、現場のことは現場に任せて指揮に専念すべきといった過去の教訓があったのも事実です。「こうすべきだ」と断言することはできませんが、少なくても、これらは一定期間の中では両立すべき課題だと思います。ただし、特に初動の時間が切迫している中においては、対策本部の指揮を放り出して現地にいくわけにはいかないでしょうから、初期については災害対策本部開催後に、必ず記者会見をするとともに、取り上げてもらえないなら、SNSで情報発信をするなど、市長の声を市民に伝える仕組みをつくることが重要かと思います。また、仮に現地に行く際には、何かあった時の指揮権の委譲を考えておくことも大切でしょう。
民間企業においても、すぐに本社の社長が現場を訪れたら、現場も気を使ってしまい大変でしょう。ある程度事態が落ち着くまでは現場に任せて、現場の足りていないことをしっかりサポートするのがトップの本当の役割ではないかと思います。
このほか「優先順位はトップの判断でつけざるを得ない」という話も大変勉強になりました。