2018/04/18
防災・危機管理ニュース

全国知事会議が17日、東京都千代田区の都道府県会館で開催された。内閣府が計画する政令指定都市への権限移譲を認める災害救助法の改正には改めて反対の意思を示した。都道府県が拠出する被災者生活再建支援基金については、仮に2016年の熊本地震クラスの災害が発生した場合、2019年度末には基金が枯渇する見通しであることが報告された。
災害救助法の改正については、内閣府が2017年12月、両者の合意が必要としながらも、道府県から希望する政令市に一部権限を移譲する災害救助法改正の方針を盛り込んだ最終報告をまとめた。現在は宮城県と仙台市、愛知県と名古屋市、兵庫県と神戸市のほか仮設住宅を供給する業界団体も交えた協議の場を設置している。
全国知事会は17日、改めて政令市への権限移譲に反対の意向を示した。神奈川県の黒岩祐治知事は13日の自民党のヒアリングに知事会を代表して出席したことを報告。「大規模災害の対応は一元的に行うべき。権限移譲は拙速」と述べた。黒岩知事は会議後に報道陣の取材に応じ、「県民の命を守るためにも、対応は一元的であるべき」と改めて説明。県内には横浜市、川崎市、相模原市と3つの政令市があるが、「横浜市に要請をされたとしても『はい、どうぞ』とは言えない」と述べ、仮に政令市から権限移譲の要望があっても応じない旨を語った。
被災者生活再建支援基金は2011年度には1005億円の残高だったが、2011年の東日本大震災や熊本地震の影響で2017年度末の残高見込みは473億円。大きな災害がなくても今年度末には317億円、2019年度末には205億円となる見込み。このままでは大災害発生で基金が枯渇する危険性が高い。
2010年に当時の災害対策特別委員会でまとめた報告書では、300億円を下回った時点で追加拠出について判断するとしており、基金創設時の600億円程度に回復させる方針を定めた。全国知事会の危機管理・防災特別委員会では7月の全国知事会議へ対応案をとりまとめる。
この日新たに全国知事会の会長に就任した埼玉県の上田清司知事は会議の冒頭、「都市対地方の構図が作られてしまっているが、東日本大震災の際は東北被災3県のサプライチェーンが全国に影響を与えた。(地域間の)相互依存と補完関係は大事だ」と述べた。
■関連記事
政令市に権限移譲で災害救助法改正へ
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4379
内閣府、県と政令市の災害時権限協議
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5466
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方