2018/04/23
熊本地震から2年、首長の苦悩と決断
指定避難所の管理運営に苦慮
前震、本震と、震度6強の地震が二度発生するという想定を超えたことが起きたことで、避難所の運営や避難した人に対する物資の支援などに手をつけられない状況でした。当初は68カ所の各行政区の中で一時避難所という形で、ある程度、住民主体で運営にあたられました。そこでは、地域の皆さんが、地域でまとまってやっていただきました。しかし、町指定の19の避難所になると、町が管理運営をしていかなくてはいけませんでした。昼も夜も職員を配置しなくてはいけませんし、警備員をつけようと思いましたが、気づいたときには警備員が不足して手配できない状況で、管理運営が大変でした。
最低3日分は各自備蓄を
町の対策本部室には、県や他県、国交省、農水省から支援職員が10~13人ぐらい、1週間~10日交代で来ておられましたが、近くに住むところがなく遠くから通っていただくことになりました。自衛隊にも来ていただき、炊き出しを給食センターでやりましたが、指定避難所の避難者に届けるには1万3000食以上つくらなくてはいけないのに1時間に800食しかできない。朝8時半から準備をして、すべて終わったのが夕方の5時過ぎです。指定外の避難所では、地域の方々が自分たちで炊き出しをされましたが、指定避難所は町の職員がやるので、なかなか炊き出しが追いつかない。住民からは「益城町はバナナが一本ずつ来ているのに、大津はまだ何も来ない、1日たっても握り飯ひとつか」と叱られました。若い職員何人かでおにぎりを作るわけですが、ビニール袋の中で丸めると早いということで、ビニールに入れて配ったら、「こんなのはにぎり飯じゃない。」と言う方もおられ、やはり3日分ぐらいは、自分たちの食べ物は自分たちで備蓄しておいてもらわないといけないと感じています。
プッシュ型の物資支援への対応
最初の1週間ぐらいは物資が来なくて大変でしたが、時間が経つと、十分足りているものまでがたくさん届くようになりました。全国の好意に感謝して受け入れますが、それを配布するのが大変でした。持ってきてくれる人も大変な苦労をされておられるでしょうし、職員には、どんなものを持ってきてもらっても、感謝の気持ちで受け取りなさいと伝えました。
最終的に場所と時間を決めて、被災された方に何時にここに集まってくださいという形で呼びかけ、2日、3日しか日持ちがしないものについては、健康を害さないように十分注意して配布しました。
住民の防災組織をつくる
指定外避難所の運営も、地域の人たちだけならお互い顔が見えているので問題も起きにくいのですが、大きな災害になると町外からの被災者の方も集まってこられ、トラブルも起きます。課題のまとめ役は職員が行わざるを得ません。しかし、実際、ボランティアをやっている方と話をすると、あの人は協力がないので困りますなどと言われ、話がまとまらなかったりしました。今後、住民主体の地域の自主防災組織をしっかりつくっていく必要があると思いました。
大津町には防災士の資格を持っている人が60人以上おられますが、今後はその内約20人の防災士の方に講習等を受けていただくなどして、町の防災指導員としての強化を図っていきたいと考えております。実は、防災指導員の皆さんに、地域の防災訓練などの指導をしてもらえるような組織づくりを進めておりましたが、実践に入る前に地震が来てしまったものですから、なかなか機能しませんでした。今後は、防災訓練を行いながら、専門の防災指導員が中心となって地域住民の安全安心のための指導をしてもらえる組織をつくってしっかり育てていきたいと考えています。
また、住民主体の地域活動に助成を行う地域防災力支援事業がありますので、防災への人材育成に取り組むことにより、まずは住民同士、顔が見えるように地域の「見える化」を進めていきたいと考えています。こうした活動が「己の命は己で守り、己の地域は地域で守る」という意識を醸成していくものと期待しています。
避難所には1mの大きな看板をつくる
今、職員には、指定避難所に大きな看板を設置するよう指示しています。いざという時に町民だけでなく、町に来ておられる町外や海外の人もどこに避難すればいいかわかるように、この地域の避難所はここですという、1メートルぐらいの目に付きやすい看板を作りたいと考えています。
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