2015/05/25
誌面情報 vol49
刻一刻と変化する海外情勢のなかでハイリスクエリア海外出張に備えるためには、情報収集と分析が欠かせない。しかしインターネット上に情報があふれかえる昨今、本当に信頼できる情報だけをスピーディーに、しかも必要なだけ効率よく収集するには、高度なノウハウとスキルが必要だ。そんな危機管理担当者の悩み解決に役立つ、日本国内でサービスを展開する2社を紹介する。
海外リスクに対する情報として国内で最も有名なのは、共同通信が配信する有料サービス「海外リスク情報」だろう。通信社の機能は、もともとロイター通信社などに代表される「新聞社のためのニュースソース」だ。日本国内は全国紙網が発達しているため想像しにくいが、例えば他国に支局を持たない地方紙が全世界のニュースを取り扱うことができるのは、通信社がニュースを配信しているためだ。共同通信社は全世界42カ所に支局を持ち、約50社の海外通信社と業務提携することでほぼ全世界を網羅するニュースネットワークを作り上げている。約20年前から、新聞社へ配信するニュースのうち、危機管理に特化した情報を企業向けに配信するサービスを開始。その情報量と信頼性、スピードにおいて国内最大級であり、多くの大手企業がモニターしている。
危機管理担当者に使いやすい画面設計と記事配信
「海外リスク情報」専用のポータルサイトではエリア別、国別に表示できるほか、「災害・事故」「誘拐・人質」「戦争・テロ」などカテゴリー別の表示もでき、過去約3年分の記事検索が可能。オプション料金を払えば過去20年分のデータベースを活用することもできる。「マイ設定」ではキーワードやエリア、カテゴリーを設定することで、関連ニュースを個人メールに送ることが可能だ。重大事件に関しては「速報メール」でリアルタイムに第1報が送られてくるほか、「リスクファイル」として、土日も含み1日に4回(朝・昼・夕・夜)、定時に主要な海外リスクを配信する。関心のある地域のニュースが見出し一覧でわかるので、忙しい業務の合間にも直近の主要リスク情報が確認できる。ほかにも「特別報告」として特派員ルポ、分析、解説記事など注目テーマを掘り下げた特集記事を配信している。
イントラネットで情報共有が可能
「海外リスク情報」を活用している日立グループは、1991年に勃発した湾岸戦争で同社の関係者25人がイラクで拘束された経験から、リスク対策部を発足。全社を挙げてリスクマネジメントに取り組むとともに、情報発信ツールとしてイントラネットの拡充に努めてきた。このイントラネットのホームページでは、共同通信社の海外リスク情報を中心に、外務省からの注意喚起や、従業員の海外での細かな被害情報(スリや置き引きなど)についても掲載。その数は毎日80〜100件にもなり、日立グループ内だけの情報公開でありながら月間のアクセス数は数百万件に達することもあるという。同社の危機管理担当者のみならず、海外渡航者には必須の情報源となっている。
□共同通信デジタル「海外リスク情報」
http://corp.kyodo-d.jp/service/risk/誌面情報 vol49の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方