2015/05/25
誌面情報 vol49
旅行会社ならではの海外危機管理ソリューション
もう1つ、今年4月から始まったユニークな有料の海外危機管理ソリューションを紹介しよう。国内旅行会社最大手の株式会社ジェイティービー(以下、JTB)が提供する、危機管理に特化したメール配信と出張者管理機能を持つ「アラート☆スター」だ。

同社は近年、旅行業だけでなく、渡航先でのコンシェルジュサービスなどサービス事業に力を入れ始めているが、本サービスもその一環。同社事業創造部(GSM事業推進室)企画開発担当マネージャーの田邊良学氏は「お客様の海外進出が加速するなか、JTBのサービスの一環として海外の危機管理もできないかとの要望が強かった」と、開発の背景を話す。
「ニュース」でなく「アラート」
アラート☆スターのメイン機能は、危機管理情報のメール配信サービスだ。世界最大級の危機管理会社iJET社(本社:米国)が発信する危機管理情報を日本語に翻訳し、24時間体制で該当エリアの渡航者にダイレクトに発信する。iJET社はメディアではなく、もともとは国外脱出やテロ、災害などからの人命救助を主たる事業とする企業であるため、報道機関が通常扱わない程度の飛行機の遅延やストライキ、病気、天候災害のほか、金銭トラブルなどの軽犯罪情報も扱っているという。
田邊氏は「ニュースでなくアラートと表現しているのは、iJET社独自の情報源により、事実だけでなく分析記事、危機回避のための行動アドバイスまで掲載している点だ。インフォメーションではなくインテリジェンス(知見が含まれた情報)を提供するのが本サービスの最大の特徴」と話す。下は今年4月末に発生したネパール地震で実際に配信されたアラートの抜粋だ。

出張者行動を管理者が一元管理
このシステムのもう1つの特徴は、日本にいる本社の危機管理担当者や人事担当者が、海外出張者の行動とリスクエリアを一元管理できるところだ。例えば、下の図はネパール地震の危険区域を表したアラートのデモ画面。赤い部分が緊急エリアだ。どこの都市にどの社員がいる予定なのかが一目で分かり、その連絡先も把握できる。ユニークなのは、過去に誰が通ったか、現在誰がいるか、これから誰が行く予定なのかがわかる点だ。あらかじめ登録しておけば未来の旅程に対するアラートも配信されるため、出発前に未然にリスクを回避することができる。出張者の旅程データを把握している同社ならではの強みと言えるだろう。
この機能により、緊急時に危機管理担当者が行わなければならない渡航者の居場所の把握や情報配信の作業が短縮されるほか、システムから出力されたリストにより安否確認の作業を行うことができる。

危機管理サポート事業を強化
同社は海外36カ国100都市に516拠点のネットワークを有し、これまでも現地で出張者のトラブルなどのサポートに当たってきた実績を持つ。今後はサービスを通じて企業の危機管理サポート事業の取り組みを強化。企業向けに海外危機管理セミナーも開催する予定だという。
◎サービスに関する詳しい内容は
〔海外渡航者向けサービス〕
http://www.jtb.co.jp/b2b/business_travel/files/alertstar01.pdf
〔企業の管理部門向けサービス〕
http://www.jtb.co.jp/b2b/business_travel/files/alertstar02.pdf
◎サービスに関するお問い合わせ先
株式会社 ジェイティービー 事業創造部 GSM事業推進室
E-mail:contact_alertstar@hd.jtb.jp

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