2018/05/29
防災・危機管理ニュース
高知県の尾崎正直知事と愛知県の大村秀章知事は28日、両県と静岡県、三重県、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県、大分県、宮崎県で構成する「南海トラフ地震による超広域災害への備えを強力に進める10県知事会議」を代表して内閣府を訪れ、小此木八郎・防災担当大臣に政策提言書を手渡した。南海トラフ地震・津波対策の住宅耐震化の抜本強化など13項目を要望した。
財源確保では2015を最後に全国防災事業が終了し、全国防災事業と緊急防災・事業費の合計は2015年度に9391億円あったものが2016年度には46.7%減の5000億円に急減。今後のさらなる対策のためにも、新たな財政支援制度の創設を訴えた。
住宅耐震化については、今年度に物件あたり100万円の補助も可能となった。例えば高知県での試算では4500棟の住宅耐震改修を行わず被災した場合の公費支出は約360億円、補助を行って耐震改修した場合は補助費を含めても約252億円にとどめることができる。さらなる耐震化への注力を訴えた。また、南海トラフ地震対策特別措置法に基づく「南海トラフ地震避難対策特別強化地域」に指定されていないゼロメートル地帯での、対策支援強化なども盛り込んでいる。
面会後に取材に応じた尾崎知事は「来年度に向けての予算確保と個別の課題事項を(小此木担当相に)伝えた」と説明。大村知事は「愛知県はじめ三大都市圏にはゼロメートル地帯が広がっている。河川・海岸堤防の強化も訴えた」と述べた。静岡県のほか高知県と愛知県を中心とした中部経済圏で南海トラフ地震対応のモデル地区が設定されている件については、尾崎知事は「市町村と協力し、高知県版ガイドラインを作る。国のガイドラインができたら改訂で対応したい。市町村にせよ都道府県にせよ統一的対応が必要だ」と語った。
さらに2017年11月から南海トラフ沿いで異常があった時に気象庁から臨時情報が出されるようになったが、その際の対応については、尾崎知事は「モデル地区でも対応の話は出ている。10県知事会議でより具体的議論ができればまた提言できる」とした。大村知事は「中部経済界で減災対応や復旧、BCP(事業継続計画)に取り組んでいる。10県で連携し、国とも議論して共通の認識で活動したい」と述べた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
-
自衛隊員の直接入力で情報連携がより早く
1月1日の能登半島地震発生から約30分、防災科学技術研究所の伊勢正氏は内閣府に向かっていた。災害時情報集約支援チーム(ISUT)の一員として、石川県庁を支援するためだ。同日中に馳浩石川県知事らとともに石川県庁に到着。自衛隊や消防、警察の実動部隊が集め、紙の地図上に集約した通行可能道路の情報を、さまざまな防災関係機関で活用できるよう電子地図上に整理していった。
2024/04/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方