4月から中小企業にもパワーハラスメント防止措置が義務化。健康経営の面からも重要(写真:写真AC)

1.はじめに

企業におけるパワーハラスメント等のさまざまなハラスメントは、個人の尊厳や人格を傷つける人権侵害行為であるとともに、職場の雰囲気が悪くなる、仕事の生産性が落ちるなど、健康経営の観点からも重大な問題です。

2020年6月1日に「改正労働施策総合推進法」が施行され、パワーハラスメント防止措置が企業の義務となっていましたが、中小企業においても、2022年4月1日から義務化されています(2022年3月31日までは努力義務)。

今回は、中小企業においても義務化された、パワーハラスメントの防止対策の内容を確認しておきましょう。

2.職場におけるパワーハラスメントとは何か

職場におけるパワーハラスメントは、職場で行われる言動で、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

ただし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、ここでいう職場におけるパワーハラスメントに該当しません。

(1)優越的な関係を背景とした言動

優越的な関係を利用した言動(写真:写真AC)

業務を遂行するにあたって、その言動を受ける従業員が、言動を発する人物に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係が、優越的な関係とされています。具体的には、次のような関係が考えられます。

・課長とその部下の関係などでは、部下は上司の言動に対して従わざるを得ない
・同僚や部下が、業務上必要な知識や経験を持っており、その人の協力がなければ円滑な業務遂行を行うことが難しい場合、当該人物の言動には抵抗しにくい
・同僚や部下が集団で行ったことに対しては、抵抗や拒絶が難しい など

(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らして、その言動が明らかに当該企業の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないものを指します。次のような例が、該当すると考えられます。

・業務上明らかに必要性のない言動や業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動


その言動が、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものかどうか」の判断は、当該言動の目的、当該言動が行われた経緯や状況などさまざまな要素を総合的に考慮することが求められます。その際、個別の事案における従業員の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。

人格を否定する言動(写真:写真AC)

ただし、当該言動を受けた従業員に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、職場におけるパワーハラスメントになり得ます。