アメリカに学ぶ政府主導の避難・対応体制

アメリカでも、災害対応は一義的には地元自治体の責務である。が、災害規模が大きく、地元自治体の対応資源だけでは不足する場合に、州が持つ対応資源を州知事が動員する体制が整っているという。さらに、国の脅威となるほどの大規模な災害が発生した場合、あるいは発生が予想される場合には、米国大統領が災害宣言を行い、大統領の災害宣言にもとづいて、連邦危機管理庁が実際の対応に従事する体制になっている。大統領の宣言により、災害による被害が起きる前でも、災害対応のギアの入れ替えが可能になる。以下は古い資料になるが、内閣府がまとめた「緊急事態における統合管理-中央政府と州政府の連携、被災者のニーズの確認と統一対応」からの抜粋である。

「災害対策が州単力では不可能だと判断された場合、州知事は予備的な被害評価に基づいて大統領に大災害非常事態宣言を発するよう要望できる。宣言が発せられると、大統領は直接連邦各機関に命令を下すことができる。各機関は大統領の命令の元に対策を実行するが、この宣言が発せられる前であっても、食料品や発電機など初期対応物資の運搬や国防総省の物資利用の申請を行うことは可能である。FEMA(連邦緊急事態管理庁)長官はFCO(連邦調整官)を州知事(州政府調整官)をそれぞれ任命し、両者は緊密に協力しながら現地での対応にあたり、対策終了後の費用分担について話し合いを行うこととされている」

過去のハリケーン対応でも、上陸の数日前に大統領宣言が出され、先手の対応が取られいる。このことは日本も学べる点ではいか。

憲法に緊急事態条項を取り入れるべきとの議論は行われているが、その合議を待っている時間もない。近年の災害は、異常気象により広域化・激甚化しており、少子高齢化や過疎化、財政難などにより職員が減少している自治体では、単体で対応できるようなレベルでなく、複数の自治体、あるいは都道府県が連携して対応に当たれる新たな枠組みが急務になっている。

政府は非常災害対策本部の事前設置を

こうした課題から日本にも防災省を設けるべきとの議論もあるが、当面の打開策としては、大規模な災害が見込まれる場合には、政府に非常災害対策本部を前倒しで設置することを提言したい。非常災害対策本部とは「非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときに内閣府に臨時に設置する機関」のことだ。本部長は防災担当大臣で、非常災害対策本部の権限が及ぶ範囲は告示された区域に限られるが、災害応急対策の総合調整を行なうため、本部長は関係機関に対し必要な指示を行なうことができるようになる。また、非常災害対策本部に派遣された指定行政機関の職員に対し、指定行政機関の長はその権限の一部または全部を委任することができる。

現状では、非常災害対策本部の設置は、災害が「発生した」場合に限られているが、今回のように大きな被害が見込まれる状態なら、先手で設置することも検討してみてはどうか。さらに規模が大きな災害が実際に起きた場合には、内閣総理大臣を本部長とする「緊急災害対策本部」に格上げすることもできる。災害の規模に応じて、自治体主導から国主導へと対応の枠組みを切り替え、多大な被害が起きることを前提に、迅速な救助・救命、復旧体制を整えていくことも今後は考えていった方がいい。

 

(9月18日7時時点での状況をもとに執筆)