「人事評価制度」見直しのポイント
機能不全に陥っている企業で見られがちな問題点から考える

毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2022/10/11
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
人事評価制度は、評価項目や評価基準などを定めて従業員を評価し、昇格・降格(等級制度)や報酬(賃金制度)に反映させるための重要な制度です。人事評価制度は、多くの企業で導入されていますが、「思うように機能しない」「従業員のモチベーションアップにつながらない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
そこで、本稿では、人事評価制度の主な課題と見直しのポイントについて解説します。
人事評価制度が機能不全に陥っている企業で見られがちな問題点としては、主に次のものが挙げられます。
① 実態に合っていない
働き方改革の推進やコロナ禍において労働環境が大きく変化しているにもかかわらず、人事評価制度が旧態依然のまま改定されておらず、実態に合わなくなっていることがあります。また、評価項目が経営理念や目標に合っていなかったり、評価基準が達成可能なものとなっていないと、従業員のモチベーションを低下させることになりかねません。
② ブラックボックス化している
人事評価の仕組みがブラックボックス化していると、従業員は、どのような行動が評価され、どのように処遇につながるかを理解することができません。
③ 評価項目が多すぎる
多すぎる評価項目は評価者の負担を大きくするだけでなく、重点を置くべき評価のポイントが不明瞭になってしまいます。複雑すぎる人事評価制度は、うまく機能しません。
④ 評価項目に偏りがある
評価項目が業績評価に偏っていたりすると、従業員が業績面で評価される仕事しかしなくなる可能性があります。他方、評価項目が能力評価や情意評価に偏っていると、高い業績を上げた従業員が十分な評価を受けられず、不満を感じ、モチベーションが低下することがあります。評価項目が偏っていたり、職種や等級に則したものとなっていないことで、人事評価制度がうまく機能しないことがあります。
⑤ 評価基準が明確でない
評価基準が明確になっていないと、評価者によって評価結果にばらつきが出てしまい、従業員の納得感が得られません。
⑥ フィードバックが十分に行われていない
評価結果だけを伝えて、何故そのような評価となったのか、どのような点が優れていて、どのような点が不足しているのか、上司から部下に対して十分に伝えられなければ、評価に対する納得感が得られないだけでなく、やる気を失ってしまうことがあります。
⑦ 評価内容が処遇に反映されない
評価内容に見合った処遇が行われないと、従業員の不満の原因となり、モチベーション低下や業務効率の低下につながるだけでなく、離職率を高める原因となることがあります。
⑧ 働き方の変化に対応できていない
働き方改革の推進により、テレワークや限定正社員制度など多様な働き方を導入する企業が増えていますが、人事評価制度がどのような働き方を選択しても公平に評価できるものとなっていないと、従業員のモチベーション低下を招く原因となりかねません。特に、コロナ禍において急遽テレワークを導入した企業では、対応しきれていないケースが散見されます。
⑨ 制度が定着していない
人事評価制度が導入されていることを従業員が知らなかったり、評価者である管理職が人事評価制度の目的や実施方法について正しく理解していないなど、社内で定着していない人事評価制度は、うまく機能しません。
ニューノーマル時代の労務管理のポイントの他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方