2015/01/20
C+Bousai vol2
2005年、兵庫県と神戸市から阪神・淡路大震災10年のシンボル事業として開催について要請があった。復興した神戸の子どもたちの元気な姿を全国に発信したいという依頼内容だった。
しかしNPO法人プラスアーツ理事長の永田宏和氏は、「震災から10年経って、未来に向けた明るく楽しいイベントを開催したいという気持ちも分かったが、楽しいだけで防災を避けて通るイベントには違和感を覚えた」と当時を振り返る。
幸いにも、防災体験プログラムは「かえっこバザール」のシンボルキャラクターであるカエルを活用すれば、楽しくアレンジすることが可能だった。永田氏は「かえっこバザール」という集客力のあるプログラムに防災教育の要素を取り入れることにした。
アートの力で、防災教育を変える
「防災を真正面から呼びかけても、防災と名前がついただけで人がイベントに来ないという現実もある。アートやクリエイティブの力で、防災教育を変えたかった」(永田氏)。
子どもに体験したいと思わせるための雰囲気づくりとして、クリエイティブは非常に重要な部分だ。プラスアーツでは、もともと、地域が1つになるための「祭り」の役割に注目していたため、スタッフは全員カエルのキャラクターTシャツを着用。のぼりを立て、演出に力を入れているという。1つひとつのプログラムには、シンボルキャラクターのカエルをモチーフにしたさまざまなツールや教材を導入している。もともと開始当時の2005年から集客力のあるイベントだったが、とある企業が開催するイベントでは数千人の来客があるほどに成長した。
体験プログラムは、プラスアーツが用意するもののほかに、地域独自の要素も盛り込める。消防車が来て運転席に乗せてもらうことや、赤十字のスタッフからAEDの講習を受けることもあるという。さまざまな種類の団体が来てプログラムを提供できるため、活動が盛んな地域ではむしろプラスアーツのメニューは絞り込み、地域の団体が特性を出して出展する傾向にあるという。
例えば、カエルキャラバンを継続して取り組んでいる地域に、東京都墨田区の一寺言問地区という古くからの下町がある。2012年には夏冬の夕方から夜にかけてイベントを開催した。下町ならではの木造密集地帯なので、寒い時期に地震が来れば建物の倒壊や火災の可能性が高い。イベント会場では公園で炊き出し訓練を行ったり、避難所の体験ワークショップなどを開催するなど、より現実に即した実践に近いメニューになっている。
C+Bousai vol2の他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方